• コラム
  • スタッフコラム

2024.10.03

猫の尿路結石は、1つではない?ストルバイト、シュウ酸カルシウムについて知ろう

猫の尿路結石は、1つではない?ストルバイト、シュウ酸カルシウムについて知ろう

猫に多くみられる病気の一つが、下部尿路疾患(FLUTD)と呼ばれるものです。とある保険会社が昨年発表したデータでは、猫の病気の治療費に関して保険請求された全金額のうち、26.4%が泌尿器関係のトラブルによるものだったそうです。
また、手術となったケースで見てみると、膀胱や尿道の中にできた結石を除去する手術が件数でも第4位に入っています。

これだけ多くの猫たちが悩むことになるトラブルですが、それだけに正しい知識を身に着けていくことが大切。
この機会に改めて知識を深めていきましょう。

猫の下部尿路疾患(FLUTD)って何だろう?


まず、猫に比較的よくみられるおしっこトラブルは、大きなくくりとして下部尿路疾患(FLUTD)と呼ばれることがあります。下部尿路疾患には、膀胱から尿道までに起こる病気の総称です。
具体的には、以下の病気が下部尿路疾患に含まれます。


・膀胱炎
・ストルバイト結石(リン酸アンモニウムマグネシウム)
・シュウ酸カルシウム結石

■膀胱炎

膀胱炎とは、その名の通り膀胱の粘膜が炎症を起こしている状態を指します。
炎症を起こした粘膜は刺激に敏感になり、排尿時に痛みを感じたり、違和感が出るようになるため、少量の排尿を何度も繰り返すようになります。少しの尿でもたまったら、膀胱が刺激されてオシッコがしたくなるようです。
逆に、残尿感から何度もトイレに行くのに尿が排出されなくなるという状態にもなります。
また、尿の中に血液が混じるようになったり、尿が独特のニオイを持つこともあります。
その原因から、大きく細菌性膀胱炎と特発性膀胱炎に分類できます。

近年では、原因が特定できない、はっきりしない「特発性膀胱炎」と診断されることも増えてきています。
ストレスを感じやすい性格の猫や、引っ越しや家族が増えるなどのタイミング、寒暖差が激しい季節などに発症しやすい傾向が見られます。
実際、特発性膀胱炎に悩む猫に、リラックス効果があるといわれているサプリメントを治療の一環として与えたところ、効果があったという検証結果も出ています。

■ストルバイト結石(リン酸アンモニウムマグネシウム)とは

ストルバイト結石は膀胱の中でリン酸マグネシウムアンモニウムという成分が結合して、結晶や石になってしまうことで発生する病気です。
最初は目に見えないほど小さな結晶ですが、徐々に大きくなっていき、ある程度の大きさになると結石と呼ばれるようになります。
この結晶や結石のもとになってしまう成分はすべて健康的な猫の尿にも含まれているものです。
この結晶がたくさんできたり、大きくなってしまうと尿道をふさぎ、おしっこをすることができない状態になることもあります。こうなると、尿道閉塞と呼ばれ緊急の手術が必要になるケースも。

基本的には、ストルバイトは膀胱の中で長時間おしっこがとどまることで発生します。以前は、細菌性の膀胱炎になっている猫では特に発生しやすい傾向にあるとされていましたが、現在では猫のストルバイトではこの説は否定されています。また、アルカリ尿の状態で発生しやすいのがストルバイトの大きな特徴となっています。

■シュウ酸カルシウム結石とは

ストルバイト結石症は細菌性の膀胱炎と関連して起こる事が多い特徴がありますが、シュウ酸カルシウム結石症に関しては細菌は関係ありません。原因の一つとして、トイレの回数が減り、膀胱の中に長時間尿がとどまっていることで発生していると考えられています。
尿に含まれているミネラル類の量や、尿pHが酸性に傾いている時間が長くなるとより発生しやすくなります。

以前は猫の膀胱や尿道結石といえば、ストルバイトが多かったようなのですが、食生活の変化などに伴い、シュウ酸カルシウムの結石を患う猫も多くなってきています。
厄介なことに、一度できてしまったシュウ酸カルシウム結石は食事での改善が難しいという特徴があるため、この結石があると診断された場合は、結石が大きくならないよう細心の注意を払って食事管理を行う必要があります。

原因が異なる2つの結石、フードやサプリメント選びも慎重に

猫に多い結石であるストルバイトとシュウ酸カルシウム結石ですが、いずれも尿pHの値が偏ることが発生しやすい傾向にあるようです。
ただ、注意が必要なのが「ストルバイト結石は尿pHがアルカリ性で発生しやすい」「シュウ酸カルシウム結石は尿pHが酸性で発生しやすい」という相反する特長を持っているということです。
同じ尿路結石ではありますが、この点を知らずにフードやサプリメント選びをしてしまうと、かえってトラブルを悪化させてしまう結果になることもあります。

例えば、猫に使用できるサプリメントの中に尿pHをコントロールする作用を持つものがあります。
しかし、その尿pHの変化が尿を酸性にさせるものなのか、アルカリ性にさせるものなのか、しっかり確認する必要があります。
というのも、尿を酸性尿にする作用があるサプリメントをシュウ酸カルシウム結石のある猫に与えてしまうと、症状を悪化させるような結果になってしまうことも考えられます。

療法食では、シュウ酸カルシウム結石と診断される猫が増えてきたことに伴い、「ストルバイト、シュウ酸カルシウム結石両方に使える」ことを明記しているものも増えてきています。
ただ、尿路結石と診断された後は動物病院でどんな食事を与えるべきか、きちんと確認してもらうようにするとより安心です。動物病院で指定されたフードをどうしても食べてくれない、というような場合は、ほかのフードの選択肢を試す前に相談してみてからの方が安心ですね。

獣医さんからコメント

以前は猫の尿路結石といえば、ストルバイトでした。それが徐々に逆転し、今ではシュウ酸カルシウム結石の猫の方が多いというデータも報告されるようになってきています。
この背景には、猫の食事内容の変化も影響していると考えられます。
具体的には、猫のシュウ酸カルシウム結石は、比較的タンパク質と脂質が多い食事で起こりやすい傾向にあることが分かっています。
以前は、いわゆる白米に鰹節をふりかけた「ねこまんま」のような食事を与えられることも多かった猫たちが、肉食獣である「猫らしい食事」を食べる機会が増えたことが影響していると考えられるのです。

また、猫の肥満も結石と関係するといわれていて、完全室内飼育をする家庭が増え、猫の肥満が多くなったこともシュウ酸カルシウム結石の増加に関係している可能性があります。
シュウ酸カルシウム結石は、猫たちのライフスタイルの変化によって増えてきたトラブル、ということができるのかもしれませんね。

DOG's TALK

tamaの獣医さん 菱沼獣医師

tamaの獣医さん 菱沼獣医師

獣医学部を卒業後、動物病院での臨床・栄養指導を経験した後に公的機関で獣医師として勤務。現在はtamaのアドバイザー、商品開発などに携わる。中型犬、小型犬と一緒に暮らしていますが、猫のことも大好きです。

おわりに

猫の下部尿路疾患(FLUTD)は、猫にとって非常に一般的な一方、重大な病気でもあります。
猫の行動や排尿の様子に異変が見られた場合は、早めに獣医師に相談することが大切です。結石が尿道を塞ぐと緊急手術が必要になることもあるため、早期発見と対応が重要です。
また、近年ではシュウ酸カルシウム結石が増加傾向にあり、ストルバイト結石とは相反する特性を持っていることから、適切な食事やサプリメント選びが必要な場面が増えてきています。

フード選びやサプリメント選びで分からないことや不安なことがある場合は、信頼できる獣医師さんに相談するか、tamaでのお買い物の際にはコンサルティングサービスも利用しながら対策をしてみてくださいね。