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2024.11.14

猫の涙焼け、これってなぜ起こるの?気になるお悩みを深掘りしよう

猫の涙焼け、これってなぜ起こるの?気になるお悩みを深掘りしよう

猫と暮らしている方なら、一度は聞いたことがあるワードに「涙焼け」があるのではないでしょうか。
「涙焼け」って聞くけど、実際にはこれってどんなもの?なんとなく原因も分からないままフードが悪い、サプリメントが効くなど、ネット上にあふれる情報に戸惑ってしまっていませんか?

猫たちの見た目の印象を変えてしまうだけではなく、フード選びを惑わせることもある厄介なこの涙焼けについて、改めてその原因と対策についてご紹介いたします。

涙焼けとは?その症状と原因

涙焼けとは、猫の目から溢れた涙が、目の周囲の被毛に付着し、濡れた部分が赤褐色に変色してしまっている状態のことです。
この被毛の変色は、目から過剰に分泌された涙が溢れて、その周辺で真菌が繁殖してしまうことで引き起こされています。
実は涙には水分だけではなく、タンパク質やミネラルなど、菌の栄養となる成分がたくさん含まれています。これらの成分をエサとして、繁殖した真菌が分泌した成分が、赤黒い汚れや茶色っぽい汚れとして見えるようになるのです。
そのため、目から涙が流れても真菌が繁殖する前に猫がグルーミングで拭き取ったり、乾いてしまえば涙焼け特有の赤茶色の汚れになることはありません。
とくに白っぽい被毛の子で目立ちやすく、逆に茶色や黒っぽい被毛の子では分かりにくい傾向にあります。普段から猫の目元が濡れていることが多いようであれば、涙焼けが出やすい環境になっていると言えますね。

 

■ こんな子は涙が出やすい!

短頭種の猫は鼻が低く、大きな目をしているので、まつげや被毛が目に入りやすいだけではなく、遺伝的に鼻涙管で排出することができる涙の量が少ない傾向にあります。鼻が低い(マズルが短い)タイプの猫(ペルシャ、エキゾチックショートヘアなど)と暮らしている方は目元の状態をチェックしてみてくださいね。

涙焼けの原因とそのメカニズム

■猫の涙焼けの原因となる菌は「マラセチア」「カンジタ」

猫の被毛を赤や茶色に変色させてしまうのは、「マラセチア」や「カンジタ」と呼ばれる真菌の働きによるものです。
これらは、実はほとんどすべての猫の皮膚などに存在している"常在菌"です。
普段は特に悪さをする存在ではないのですが、皮膚のバリア機能が低下したり、繁殖しやすい条件がそろってしまうと様々なトラブルの原因となります。

マラセチアは外耳炎やマラセチア皮膚炎などのトラブルの原因になることもありますので、そういったトラブルについてご存じの方なら聞いたことがあるかもしれませんね。

マラセチアやカンジタに限ったことではないのですが、真菌が繁殖しやすい条件はある程度共通していて、「湿度、温度、栄養となる成分」の3つが大きなものです。
これらの条件がすべてそろうと、特定の菌が繁殖しすぎてさまざまなトラブルの原因になるとされています。
また、涙のpHがアルカリに寄っていると雑菌が繁殖しやすい環境になると考えられています。涙のpHが酸性化すればマラセチアやカンジタなどの涙焼けの原因となるものが繁殖しにくい環境になると考えられているそうです。

涙やけは、繁殖しやすい条件がそろってしまうことで、真菌が繁殖し、涙に含まれる成分を分解することで、ポルフィリンと呼ばれる赤茶色い色素を作り起こっています。

 

■猫の涙があふれてしまう理由

猫の涙があふれて目元が濡れたままになってしまうことで、真菌が繁殖してしまいます。しかし、目から涙が過剰に出ることがなければ涙焼けになることはほとんどありません。猫の目元が濡れたままになるほど涙が出るようになってしまう理由は、いくつか考えられます。

・鼻涙管が詰まる
本来、涙を排出するために、鼻に向かって涙を流す鼻涙管という細い管があります。涙が本来必要な量より余分に分泌されたり、鼻涙管がつまってしまうと、この鼻涙管で流すことが出来る限界を超えて、目から溢れます。ペルシャ猫など短頭種の猫は特に詰まりやすい傾向にあるようです。

・目の中に被毛が入っている
長毛の猫などの場合は、伸びた毛が目の中に入ってしまい、刺激によって過剰に涙が出ている可能性があります。また、逆さまつげなどによって涙が出やすくなっているケースもあります。

・目や目元の外傷
猫は大きな目を持っていますが、それだけにぶつかったりほかの猫との争いの中で目や目元を怪我してしまうリスクも抱えています。
とくに同居猫がいる場合は、猫の目元が濡れていたら目元のケガの可能性がありますので、よく観察してあげてください。

・その他の体質的な問題
涙が多く出てしまう猫の場合、体質的なものが原因となっている場合が多く、この場合は涙の量を減らすことは難しいです。ハウスダストや花粉などが原因で涙の量が増えている場合は、掃除をこまめに行い、衛生環境を整えることで軽くなることがあります。

猫の涙焼け対策のために、すぐに始められる一工夫

猫の目元で真菌が繁殖しすぎないようにすれば、涙やけによる赤茶色の痕は改善に向かうはずです。このことを踏まえて、今すぐできる対策の例をご紹介します。

 

■涙をすぐにふき取る

まずはやっぱり基本。涙はこまめに拭き取りましょう。涙そのものは透明で、赤茶色が付くことはありません。赤茶色になってしまう前にきれいにすれば、目元もきれいなままです。

 

■目の周囲の毛は短めにカット

すでに涙焼けになってしまっている目元の毛は一度短くカットしてしまうのもオススメです。毛が短い方が、増えすぎた菌を対策するのには適しています。

 

■衛生的に維持しよう

目の周りを拭き取る時には、真菌などの繁殖を抑える働きがあるローションなどで拭き取ることも効果的です。

 

猫の涙焼けとフードに関係はあるの?

「フードを変えたら涙焼けがよくなった」という体験談を聞いたことがある方もいると思います。これって本当なのでしょうか?
このことについて、犬で調査をした研究結果があります。

2019年に行われた研究では、涙焼けの症状がある犬たちを観察し、ドッグフードを変更した結果涙焼けが改善されたケースに注目し、体内でどんな変化が起きているかを検査しました。
すると、これまで涙焼けの直接的な原因と考えられていた説とは異なる結果が出て、注目されるようになりました。

以前、涙焼けの大きな原因の一つとして考えられていたのが「食物アレルギー」でした。
今回の研究でも、当初はアレルギーを引き起こす物質が含まれていないため、涙焼けも改善されたのでは?という仮説のもと、検査が行われたそうですが、アレルギー反応が落ち着いた形跡はあまり見られなかったようです。

一方、はっきりしたのは「ウンチのpH」の変化でした。これは、腸内細菌が作り出す"短鎖脂肪酸"という成分が多くなったことで、pHが変化したという結果。
このウンチのpHが大きく変化した犬ほど、涙焼けの症状が改善される傾向にあったのだとか…。

この研究の中では、腸内環境の状態が涙焼けの症状に何らかの影響を与えているのでは?と結論付けられています。
現在もこの研究についてはより詳しい調査が進められつつある段階ですし、この研究は犬が対象であり、猫でも全く同じことが言えるのかどうかも分かりません。
しかし、今後この研究がさらに進められて、猫の涙焼けに対するアプローチとして有効なことが分かれば、「腸内環境」「消化に良い」というキーワードでフードを探してみるのも、一つの基準になるかもしれません。

おわりに

今回は猫の涙焼けの原因や対策について詳しく解説しました。涙焼けは、見た目の問題だけでなく、猫の目元の異常を知らせるサインの可能性もあります。
涙の分泌が過剰になる原因を理解し、適切なケアを行うことが、涙焼けの予防につながります。
特に、真菌の繁殖を抑えるためには、日常的な衛生管理を意識することも大切です。
猫の涙焼けとフードの関係については、犬での研究結果を参照すると、腸内環境や消化の良さが猫の涙焼けに対する新たなアプローチにつながる可能性がありますが、まだまだ分かっていない部分も多いのが事実。今後、猫たちに適した涙焼けへのアプローチが生まれることに期待したいですね。