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2022.08.11
猫の食欲・元気を応援!?ビール酵母がオススメの理由を深掘り
暑い日にはついビールが飲みたくなる、という方も多いのでは。そのビールを作る際に活躍するのが、ビール酵母と呼ばれる微生物です。
実はビール酵母は、キャットフードやサプリメントなどにも使われることが多い素材のひとつ。私たちにとっては美味しいビールですが、猫にとってはどんなメリットがあるのでしょうか?与えることに危険性はないのでしょうか?
今回は、ビール酵母と猫の関係、そして期待されている働きについて少し深掘りしてご紹介いたします。
ビール酵母を猫に与えても問題ないの?
アルコール飲料である「ビール」の名前が含まれていることから、アルコール分を含むのではないかと心配される方も多いですが、実際はビール酵母を猫に与えても問題ありません。
キャットフードや猫のサプリメントなどに使用されるビール酵母は、ビールを作るために使われているイースト菌です。
古代からパンなどを製造するために使われてきた人間にはなじみ深い微生物ですが、近年ではそのような株の中から選抜された優秀な株が純粋培養されていて、安全性が高いものが使われています。
ビールなどを製造する際に活用されることからも分かるように、この酵母は発酵の過程でアルコールを作る働きがあります。しかし、酵母自体にはアルコールが含まれているわけではありません。
ですから、ビール酵母を含むサプリメントやキャットフードを与えたからと言ってアルコールを摂取させることにはなりません。
ビール酵母に含まれる栄養素をチェック!
そんなビール酵母を猫に与えるメリットとして、豊富な栄養素が含まれていることが挙げられます。ビール酵母に含まれる成分の中から、猫の健康維持に深く関係する栄養素をご紹介いたします。
■猫にとっての必須アミノ酸を網羅している
ビール酵母には猫の必須アミノ酸が10種類、含まれており、効率よく必須アミノ酸を摂取するために非常に役立つ素材です。
必須アミノ酸とは、体の中で作ることができないアミノ酸で、食事から補う必要があるもののことを指します。動物によって体の中で作ることができるアミノ酸は異なるため、人間では9種、猫では11種のアミノ酸が必須アミノ酸と指定されています。
これらのアミノ酸は猫の体内でタンパク質に再合成され、細胞を作る際に役立てられたり、代謝されてエネルギーとして使用されるなど、さまざまな役割を果たしています。
これらのアミノ酸をバランスよく摂取することが、健康のためには大切です。というのも、必須アミノ酸を体の中で使用するときには、最も量が少ないアミノ酸にあわせた量しか使用されない「桶の法則」が存在するからです。
こちらについては、以前Dr.マイのコラムでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。(Dr.マイのコラムはこちら→良質なタンパク質って?アミノ酸スコアからタンパク質を考える)
■第7の必須栄養素ともいわれる「核酸」を含んでいる
「核酸」とは、遺伝子情報を含み、細胞の設計図といわれる「DNA」と、設計図を読み取る大工さんと言われる「RNA」によって構成される成分。
新しい細胞を作り出すために必要な成分である「核酸」は、肝臓や腎臓で作られますが、人間では20歳あたりをピークに加齢とともに減少するといわれています。猫でも同様に、加齢に伴い徐々に核酸は減少していくことが、細胞の入れ替わりのサイクルに影響し、老化に関係している可能性があります。
ビール酵母には、核酸のひとつであるRNAが豊富に含まれています。
体内にRNAが十分にあれば、肝臓がDNAを作り出し、核酸として体内で使用されるようになります。
■腸内細菌の発育を育てる栄養素も含み腸内環境を整えるサポートに
ビール酵母は、腸内細菌の増殖に必要なさまざまな栄養素(ビタミンB1・B2・B6、アミノ酸、核酸、食物繊維など)を含んでおり、腸内環境を整え、腸内細菌の働きを健康的に維持することも期待できます。
腸内に暮らす細菌たちの数を、適切なバランスで維持させることが健康維持の秘訣。そのために役立つ栄養素がバランスよく含まれているのがビール酵母の特長なのです。
ビール酵母を含む食事を継続して与えることで、猫の腸内環境が安定し、良いうんちが出やすくなることが期待できます。
実際にキャットフードの原材料のひとつとしてビール酵母を使用しているものもあります。これは栄養補給や栄養バランスの調整としてだけではなく、プロバイオティクスとして使用されていると考えられます。
猫の嗜好性をアップさせる?腎臓に良いって本当?
栄養面とはまた別に、ビール酵母についてインターネット上でたびたび話題になるトピックについてもご紹介いたします。
■猫の食欲を促進するって本当?
猫の好みにもよりますが、一部の猫たちの中には、ビール酵母が放つ独特のにおいが大好き!という子もいるのは事実です。
全ての猫たちにいえることではないのですが、ビール酵母のにおいが食欲を促進し、以前よりも食いつきがよくなる、という意見も多く見られます。
食が細い猫にはビール酵母を継続して与えているというtamaのスタッフもいます。
ビール酵母に猫の食欲を刺激するような成分が含まれているわけではありませんが、豊富なアミノ酸やビタミン類、ミネラル、核酸などの栄養をバランスよく摂取できる酵母は、猫も本能で「食欲がない時に役立つもの」だと分かっているのかもしれません。
猫の元気がないように見える時、食が細くなっている時には、ビール酵母を栄養面のサポートとして活用するのもオススメです。
■猫の腎臓にビール酵母が良いって本当?
"最近、猫の慢性腎臓病にはビール酵母がオススメ!"というネット記事を見かけます。どうやら根拠として、腎臓病のマウスにビール酵母を与えた結果、腎不全の時に高くなるBUNやクレアチニン、リンの値の上昇が抑えられたという実験の結果が根拠になっているようですが、この実験は猫を対象にして行われたものではなく、この結果をそのまま猫に当てはめるのは難しいと思います。
ビール酵母には一定量リンも含まれます。猫の慢性腎臓病ではリンの制限が一つの治療法となりますので、「腎臓に良いと聞いたから」と家族の判断だけで人間用のビール酵母を与えると、かえって体調を崩してしまう可能性もあります。
腎臓病の猫にサプリメントを与える時は、担当の獣医師と相談しながら、適量を守って行うことが前提となっています。
おわりに
今回は、猫の健康維持にも役立つビール酵母についてご紹介いたしました。「元気がない時にいいらしい」ということはご存知の方が多かったと思いますが、意外と栄養も豊富。
暑さのせいか食欲が落ち込みがちに見えたり、遊びにも興味を示さないなど、夏の暑さ疲れが見えるようであれば、ビール酵母を含むサプリメントをちょこっとプラスしてみてはいかがでしょうか。
そのほかにも、キャットフードやサプリメントに含まれる成分や原材料などで気になるものがあれば、お気軽にtamaのコンサルティングサービスでご質問ください。