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2022.06.02
猫の肥満の元?低い方が良い?キャットフードの脂質について
キャットフードを選ぶときにどんなことを基準にフード選びをしていますか?
猫の好みや続けやすさなどのほかに、健康管理も大切なポイント。猫の体調やお悩みに合わせてフードを探すときにひとつの指標となるのが「保証分析値」と呼ばれるもので、フードにどんな栄養がどれくらい含まれているかを表しています。
保証分析値に書かれている栄養は、猫の必須栄養素が主です。
その中に、含まれる項目「脂質」。皆さまはキャットフードを選ぶとき、脂質の量に注目していますか?同じような原材料を使っているフードで、脂質が高いものと低いものがあればどちらを選びますか?
今回は、キャットフードの「脂質」についてご紹介いたします。
キャットフードの脂質の役割とは?
キャットフードに含まれる脂質には大切な役割があります。
それは、猫にとって非常に効率の良いエネルギー源となること。脂質は猫にとってタンパク質と並ぶ重要な栄養素のひとつであり、1gあたり約8.5~9kcalとタンパク質(1gあたり約3.5~4kcal)の2倍以上のエネルギーをつくり出すことができます。
人間であれば、主なエネルギー源となるのは白米や小麦などに含まれる炭水化物、それにタンパク質と脂質でバランスよくが理想的ですが、猫の場合は炭水化物が少なく、代わりに脂質とタンパク質を多めに摂取してきた生き物です。
脂質が十分でないと、猫がエネルギー不足に陥り、元気がなくなるほか、どんどんやせていってしまうことも。
また、脂質は細胞膜やホルモンの構成成分としても重要な栄養素です。細胞膜の表面はリン脂質と呼ばれる成分で覆われているのですが、十分に細胞膜の表面を脂質で覆うことができないと細胞が簡単に壊れてしまいます。
それから、脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)の吸収を促すなども重要な役割になっています。
■ 肥満体形の猫の脂肪について
では、もうすでに体についてしまった脂肪についてはどうでしょうか?実はこちらにも大切な役割があります。
タンパク質などは体の中にエネルギー源として貯蔵しておくことは難しいのですが、脂質は体脂肪という形である程度貯蔵することが可能です。体脂肪は、食料が十分に手に入らなかったり、病気などで食事がとれないときなどのエネルギー源として活用されます。実は、ある程度の皮下脂肪がある方が病気や怪我をした後の回復力が高い、なんて説もあります。そのほかにも、体温の保持、内臓の保護をする役割があります。
脂質にも色々な種類があります
脂質と一言で言っても、さまざまな種類があります。脂質を構成する主な成分は脂肪酸と呼ばれ、この脂肪酸の種類によって得意なこと、不得意なことや個性が分かれます。
大きな分類としては、バターやラード、動物の肉の脂身など、常温で固形になることができる脂を「飽和脂肪酸」、一方で常温で液体状になる、サラダ油やオリーブオイルなどの脂を「不飽和脂肪酸」としています。
最近では、飽和脂肪酸よりもさまざまな健康維持に役立つ働きを持つ不飽和脂肪酸に注目が集まっています。
キャットフードなどに含まれる脂肪酸でよく話題になるものをいくつかご紹介いたします。
【キャットフードによく使われる脂肪酸】
★アラキドン酸(猫の必須脂肪酸、肉、卵、魚、肝油などに含まれる成分)
・EPA(イコサペンタエン酸・エイコサペンタエン酸)
・DHA(ドコサヘキサエン酸)
・α-リノレン酸(シソ油、エゴマ油、キャノーラ油、大豆油などの主要成分)
・γ-リノレン酸(月見草油など一部の限られた植物油に含まれる成分)
これらのうち、アラキドン酸は子猫から成猫まですべての世代の猫に必須量が、EPA、DHA、α-リノレン酸は子猫期の必須栄養素としてAAFCOの総合栄養食の栄養基準で必須量が明記されています。
肉や魚に含まれる脂肪酸であるアラキドン酸が必須栄養素になっているのは猫だけです。これは猫が肉を中心に食べてきた純粋な肉食動物だからこそ。総合栄養食を与えていれば不足することはまずありませんのでご安心ください。
魚の脂に含まれているEPA・DHAはオメガ3脂肪酸の一種で、猫の健康維持に非常に重要な役割を持っています。その働きやEPA・DHAの特長については、改めて知ろう。オメガ3脂肪酸ってどんなもの?調べてみました[#調査隊レポート]で詳しくご紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。
猫にとって脂質は多い方が良いの?少ない方が良いの?
キャットフードを選ぶときに、同じようなスペックのフードで脂質が高いフードと低いフードがあったら、どちらを選べばよいのかというと、猫によって異なるというのが正直なところです。
これまでご紹介してきた通り、猫にとって脂質は重要なエネルギー源です。また、必須栄養素のひとつでもありますので、どんな猫でもある程度の脂質は必要になってきます。
では、肥満体形の猫は脂質の制限が必要なのでしょうか?
体重管理用の猫の療法食では、脂質が低めになっているものが人気です。とはいえ、脂質が低いフードを与えさえすれば痩せる、というわけでもありません。猫の体重を減らすことは難しく、適度な運動のほかにもオヤツの制限など組み合わせながら行うことが必要になります。猫の体重管理を意識したい時、その方法のひとつとして脂質が控えめのフードを選ぶといいと思います。また、最近を適度に抑えつつ炭水化物量を少なめにすることで体重管理を行うフードも登場しています。
脂質は大腸を刺激するといわれるので、ウンチが固く便秘になりやすいという猫は、食事を見直して低脂肪過ぎるフードを与えていないかをチェックしてみるのも良いかもしれません。(※便秘の原因は脂質だけではなく、運動量やフードに含まれる繊維質の量・バランスによることもあります。詳しくは「猫のコロコロウンチ、これって便秘?猫の便秘対策法をご紹介【ペット栄養管理士監修】」)
一方で、中には体質的に脂質が高いフードを食べると下痢気味になってしまうという子もいますので、そういった子は脂質の含有量に注意して食事選びをする必要があります。
ちょうど良い脂質の量というのは、猫の体質によります。どれくらいの脂質のフードであれば、体重が変化するのか、あるいは健康的な良いウンチをしてくれるかなどを家族が観察して、適したものを探してみてください。
おわりに
今回はキャットフードに含まれる「脂質」についてご紹介いたしました。
脂質、というと「肥満」とか「胃もたれ」というイメージが付いて回り、脂質が少ないフードの方が良いのではないかと考える方も多いと思います。でも、純粋な肉食動物である猫にとって脂質はエネルギー源として、体作りをしていくため、さらに健康維持のための栄養素としても非常に重要です。
猫の健康維持を意識するのであれば、どんな脂質が含まれているのか、猫の健康状態に合っている脂肪酸が含まれているのかをチェックしてみると、キャットフード選びのヒントになるかもしれません。