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2024.08.29
猫のゴロゴロ音、快適な時だけじゃないって本当?猫の研究を読もう
猫の感情表現といえば、皆様は何を思い浮かべますか?
喜といえばスリスリ。怒りを表現するシャーシャー。哀しみを表現する呼び鳴きや、ハンティングモードなど楽しい時に見せるときの「カカカッ」という短い声。
猫たちはいろいろな方法でその気持ちを表現しています。
さて、そんな猫の感情表現の一つが、喉を鳴らす「ゴロゴロゴロゴロ…」という音。喉を鳴らしているとき、猫たちはどんな感情なのでしょうか?
そんな猫たちのゴロゴロ音について調査した研究で、面白いことが分かっています。今回は、猫たちのゴロゴロ音について最新研究を交えてご紹介いたします。
猫のゴロゴロ音には種類がある!?
皆様、猫がゴロゴロ喉を鳴らしている時はどんな感情になっているときでしょうか?
多くの方は「幸せを感じているとき」「うれしいとき」「リラックスしているとき」をイメージしているのではないでしょうか。それは、半分正解。
イギリス・サセックス大学の研究チームの調査によって、猫のゴロゴロ音は、幸せな時以外にも、「不満があるとき」「何かを要求したいとき」「落ち着かないとき」にも発せられていることが判明しました。
そして、その不満や要求、落ち着かないときを表現するゴロゴロ音は、幸せを感じているときのゴロゴロ音と比較すると、ほとんどの猫で明らかに異なる音を出していることも分かりました。つまり、猫たちは気持ちに合わせて2種類のゴロゴロ音を使い分けていたということです。
緊急性がある?ゴロゴロ音について
猫たちが発する2種類のゴロゴロ音を録音し、解析を行ったところ、周波数に違いがあることが判明しました。
そして、猫たちに不満があるとき、要求をするときのゴロゴロ音のほうがより人間にとっては「緊急性がある」と感じる音色になっているそうです。(どんな音なのかは、研究論文に音声データが掲載されています)
ゴロゴロ音を出しているとき、猫たちは私たち家族に向けて
「不満だよー、してほしいことがあるよー」とメッセージを送っているのです。
また、猫が同じように悲しい気持ちになっている時や、家族を呼び寄せるときの鳴き声は、不満のゴロゴロ音と同じように人間にとって「緊急性がある」と感じさせる周波数であることが分かりました。
そしてこの時の猫の鳴き声は、人間の赤ちゃんの泣き叫ぶ声と周波数が類似しているというのです。この赤ちゃんの泣き声は、人間の本能にとって無視できない音であり、このことが猫が人間を魅了し続ける理由の一つになっているのでは、という可能性も指摘されています。
猫のゴロゴロ音から分かる、猫と家族の関係とは?
現在、猫たちと私たち家族とのコミュニケーションの取り方は、「母親と子猫」の関係にルーツがあると考えられているそうです。
人間と一緒に過ごすようになった猫は、母親がいないと生きていくことが難しい子猫のころに見られる行動が、大人になっても見られることが、野生下で生きる猫たちとの大きな違いになっているそうです。
子猫の時期は、本来は単独行動を習性として持つ猫たちが唯一ほかの個体(親猫、きょうだい猫)と社会的な関係を構築しようとする時期でもあります。
猫たちが喉を鳴らすのも、本来は子猫たちが家族という社会の中で自分の感情や意志を表現しようとする行動の一つ。子猫は、母親から乳を飲んでいるときに喉を鳴らすことが分かっています。
このことから、猫たちは一緒に暮らす家族に対して、「母親、あるいはきょうだい猫」として考えている可能性があるということのようです。そして、猫たちは「自分たちの気持ちを表現すれば、分かってくれるはず」と思っていて喉をゴロゴロ鳴らしている可能性が高いのです。
おわりに
今回は、猫たちの感情表現の一つ、ゴロゴロ音とそのメッセージについてご紹介いたしました。様々な方法で考えや気持ちを伝えようとしてくれている猫たち。そこには、「家族なら分かってくれるよね」という期待が込められているのかもしれません。
そんな猫たちのキュートな感情表現をしっかりと受け止めて、これからも愛情を伝えていければいいですね。
参考文献
*1 『The cry embedded within the purr』Correspondence| Volume 19, ISSUE 13, PR507-R508, July 14, 2009