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2024.06.13

猫にも必要?害虫対策について獣医さんに聞いてみました

猫にも必要?害虫対策について獣医さんに聞いてみました

外を歩いていると、気付かないうちに虫に刺されていた!なんてことが多くなってくる季節。
かゆくなったり、腫れて痛くなったり…。何かと厄介な害虫は、虫よけスプレーを使うなどして対策する方が多いと思います。
では、猫たちはどうでしょうか?
動物病院などでは、猫の害虫対策をオススメするポスターなどを見かけたことがある方も多いと思います。

そこで、今回は猫の健康にかかわる厄介な害虫についてご紹介します。また、完全室内飼育の猫でも対策が必要なのか、どのように考えるべきなのか、知っておきたいことを獣医さんに質問してみました。
猫を健康に保つために役立つ情報ですので、ぜひご覧ください。

DOG's TALK

tamaの獣医さん 菱沼獣医師

tamaの獣医さん 菱沼獣医師

獣医学部を卒業後、動物病院での臨床・栄養指導を経験した後に公的機関で獣医師として勤務。現在はtamaのアドバイザー、商品開発などに携わる。中型犬、小型犬と一緒に暮らしていますが、猫のことも大好きです

猫にかかわる害虫について知ろう

害虫対策というと、毎日散歩に行く犬がするものというイメージを持っている方は多いかもしれません。
でも、実は家の中でも害虫が付いてしまう可能性はゼロではないのです。
今回は猫にかかわる害虫の中でも、とくに室内でもリスクが高いものを3つご紹介します。

マダニについて

一度ついてしまうと家庭で取り除くことが難しい「マダニ」。
猫などの哺乳類の体に寄生するこの害虫は、固い外皮を持っていて、吸血することで非常に大きく膨張し、特徴的な見た目になります。
厄介なことに、マダニの仲間は一度吸血すると容易に離れないように、セメントのような物質を分泌して猫の皮膚などに強固にくっついてしまいます。元の体重の約100倍になるまで血を吸わなければ離れてくれません。
こうなってしまうと、家庭で取り除くことはほぼ不可能なので、動物病院での処置が必要になります。

一度に大量にマダニに寄生された場合、感染症にかかってしまったり、体力がない子猫や老猫では貧血を起こすともあります。

■マダニはどこから来るの?

・元野良猫、保護猫などで、前から寄生されていた

屋外で暮らしていた経験を持つ猫は、マダニが付くリスクが高くなります。
マダニは以前は緑豊かな山や林などが主な生息域とされ、都市部ではあまりみられることがなかったのですが、近年では生息域を広げつつあります。
マダニは少しでも樹木や草が生えているところなら、民家の裏山や裏庭、畑、あぜ道のほか、公園や河川敷であっても生息しているといわれます。
外で暮らしてきた経験がある元野良猫、保護猫の場合は、寄生されている可能性がありますので、先住猫がいる家庭では迎え入れてすぐに対面させることは避けた方が安全です。



・家庭の中にマダニが持ち込まれた

もうひとつ、家庭の中にマダニが持ち込まれている、というケース。
実はマダニは人間にも簡単に寄生します。山や林などのアウトドアレジャーに行ったとき、靴下や衣服、靴などにくっついて家の中に持ち込まれてしまうこともあります。
アウトドアでなくても、ちょっとした河川敷の草むらや公園にある茂みにもマダニは息をひそめているかも。

猫が完全室内飼育であったとしても、家族がマダニを持ち込んでしまうことで寄生されてしまうという可能性があります。

■ 人間の感染症の原因になることも…

実は、マダニが人間の感染症の原因となることもあります。中には重篤な症状となる可能性もありますので、家庭内にマダニは持ち込まないように注意したいですね。

マダニが媒介する代表的な感染症には、ライム病や日本紅斑熱といったもののほかにも、近年問題になっているウイルス性の病気もあり、重症化するリスクが高くなっていることが指摘されています。

フィラリアについて

フィラリア症は、蚊を媒介して感染する寄生虫による病気です。
近年では、フィラリア(犬糸状虫)は猫にもに寄生し、悪さをすることが分かり、その予防の重要性が注目されるようになってきました。

蚊を媒介して猫の体内に入ったフィラリア幼虫は、血管を通って体内を移動しながら成長し、肺動脈に到達するまでにほとんどが死んでしまいます。
このタイミングで死亡した幼虫の死骸に対して免疫反応が引き起こされ、炎症が起こることで最初のフィラリア症の症状が出ます。
この時、猫にみられる症状は咳き込んだり、呼吸が苦しそうになるなど喘息に近いものだと言われます。

生き残ったフィラリアが成虫となると、一度呼吸器系の症状は軽くなりますが、その後に成虫が寿命(約3年以内)によって死亡した際に、再びフィラリアの成虫の死骸が血栓を作り、フィラリア症の症状がみられます。
幼虫よりも大きな成虫が死亡した時には、血管をふさいでしまう「血栓症」を引き起こし、これによって猫の突然死のリスクがあると言われており、注意が必要です。

■ 完全室内飼育の猫はフィラリアにならない?

「猫は犬と違って完全室内飼いだから、フィラリア症のリスクは少ない」という意見を聞いたことはないでしょうか。
たしかに、毎日散歩に行く犬と、家の中で過ごす猫では、蚊に刺されるリスクには違いがあります。
しかし、地域にフィラリアに感染している犬や猫が多ければ、フィラリア幼虫を持っている蚊も多くなり、一回蚊に刺されただけだとしてもフィラリアに寄生されてしまう可能性は高くなります。

少し前のデータ(2008年)になってしまいますが、首都圏の動物病院の調査では、猫の10頭に1頭以上がフィラリアの感染歴があるとするデータも出ています。
さらに、そのうち1/3~4が、完全室内飼いの猫だったということですから、「完全室内飼育だから大丈夫」とは言い切れなくなってきていると感じます。

これが元野良猫や、保護猫なら、より感染率は高くなっていると言えると思います。
呼吸器系疾患が見られる猫や突然死してしまった猫に一定の割合でフィラリア症の感染が見られるのは事実です。
これまで、あまり猫のフィラリア症自体に注目がされてこなかったことや、検査の精度が低く、件数自体が少なかったことも、実態を見えにくくしているのかもしれません。

ノミについて

猫がかゆがっていたり、謎の虫さされ痕を発見したりしたら…もしかしたらノミのしわざかもしれません。
ノミは1年中みられる昆虫で、宿主上での寿命は猫で1~3週間といわれています。
ノミは宿主に寄生してから10分以内には吸血を開始し、約24~48時間後には大量の卵を産卵しはじめます。産み落とされた虫卵は2~7日で羽化し、幼虫となります。
幼虫はカーペットやソファ、部屋の四隅など湿気が高く暗い場所を好み、食べこぼしやノミ成虫の糞などの有機物をエサにして脱皮を繰り返しサナギになります。成長したノミが再び猫について…と言った感じで、何度も繰り返し発生するのが厄介なところ。

一度発生してしまったノミを家庭の中だけで対策するのは難しいので、適切な処置を動物病院で受け、指示通りの対策を行っていくのがオススメです。

■猫にノミが付いてるかも?サインは

ノミが付いてしまった場合でも、かゆがるなどの仕草がないまま湿疹が出る場合も。人間のような虫刺されができることもありますが、豊かな被毛を持っているため、気付きにくいです。
また、アレルギー反応を示して脱毛が見られてしまう子も少なくありません。中にはノミがついても平気な顔をしている猫も多いため、様子がおかしいと感じたら動物病院で相談するようにしてください。

これらの症状が見られて、猫の毛の中やベッドなどに黒く小さな粒を見つけたら、それはノミのしわざかも。
寝床や被毛の中にある小さな粒を、湿らせたティッシュの上に置いてみましょう。
粒が溶けて赤茶色になったら、それは血を吸ったノミのフン。残念ながら、ノミが寄生しているかもしれません。

■ 猫にノミがついてしまったら…

まずは、動物病院で処方される、ノミ取り用のシャンプーや薬剤などを指示通りに使うようにしてください。
症状が良くなったから…と家族が判断して使用をやめてしまうと、またすぐにノミが息を吹き返すことも少なくありません。
また、ノミは短期間で世代交代をすることができるので、猫の体からノミが居なくなったとしても、カーペットや猫用ベッドなどにノミの卵や幼虫が潜んでいる可能性もあります。
これらも合わせて買い替えたり、熱湯などで消毒することが必要になってきます。

外出しない猫も害虫対策が必要なの?

今回ご紹介した害虫に関しては、猫が完全室内飼育であったとしても予防としての駆虫薬は使った方が安全、といえると思います。
ここまでご紹介した通り、猫が外に出ることがなくても、害虫が寄生する可能性を完全にゼロにすることは難しいです。

とくに、以下に挙げた条件が当てはまる家庭では、駆虫薬を使うか、動物病院で相談してみてください。


・猫が庭やベランダなどを出入りすることがある
・新しく猫をお迎えしたばかり
・家族がアウトドアに良く出かける
・同居する犬がいる
・ペットショップやトリミングサロンなど、ペットに関連する場所に出入りする家族がいる


もちろん、地域によってマダニやフィラリアの生息状況が異なるので、かかりつけの獣医師さんと相談したうえで使うかどうかの判断するようにしてくださいね。

おわりに

猫の健康に影響する代表的な害虫についてご紹介しました。
少し前まで、猫は完全室内飼育であれば、害虫対策は必要ないという意見が多かったように思います。でも、近年ではある程度対策を行う、あるいは対策しないリスクもしっかり知っておいた方が安心、という意見も出てきています。
猫自身が外に出なくても、家族が寄生虫を持ち込んでしまうリスクはありますので、それぞれの家庭で「対策をする/しない」を話し合ってみてください。