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2023.12.21
こんな子は要注意!猫の誤飲について知っておきたいことをまとめました
猫は好奇心旺盛な生き物で、時折知らぬ間に危険なものを口にしてしまうことがあります。イタズラ程度で済めば良いですが、中には猫の命に係わるケースも…。
今回は、できることなら避けたい「誤飲」「誤食」について、これらのリスクから猫を守るために知っておきたいことをまとめてみました。
家庭にある普段の品々から食べ物まで、意外な危険が潜んでいる可能性があります。
安心して猫との共同生活を楽しむために、日頃からの注意したいポイントとはどのようなことでしょうか。
日常生活の中で見逃しがちな危険や安全のための配慮について、一緒に考えていきましょう。
猫の誤飲事故は多いです
猫の誤飲事故には十分注意が必要です。ほかのトラブルや病気に対しても注意が必要なのは言うまでもありませんが、誤飲事故は「家族がきちんと対策できていれば防げた」と後悔する人が多いトラブルでもあります。
それでは、猫の誤飲事故に関するデータをご紹介します。
■特に注意が必要なのは、子猫~若い猫
子猫~若い猫たちは遊び好きで好奇心も非常に強い傾向にあります。また、この頃の猫は食欲も旺盛なため、思わぬものを口に入れてしまうことが多くなります。
とあるデータによると、0歳~1歳までの期間の猫の異物誤飲・誤食の発生率は1.3%となっています。
これだけ見ると、あまり高くはないように感じる方もいるかもしれません。でも、このデータは保険に加入している猫のみでのデータであり、実態はより多くの猫たちが誤飲・誤食をしていると考えられています。
さらに注意が必要なのは、子猫の時期に誤飲・誤食があった猫は治療をした後でも約6.7%の確率で再発しているということです。
誤飲・誤食の治療を受けた猫のうち、15頭中の1頭以上の猫が誤飲・誤食で動物病院で再度治療を受けているという計算になります。
一度は無事だったとしても、きちんと対策を取らなければ、再度同じようなトラブルが起こってしまうというところも、誤飲・誤食の特長のひとつと言えるのかもしれません。
*1 データ参照元:アニコム 家庭どうぶつ白書 http://www.anicom-page.com/hakusho/
■中年期、高齢猫でも注意が必要
子猫や若い猫でとくに起こりやすい誤飲・誤食ですが、成猫になり、落ち着きが出てくれば安心…という訳ではないのが注意したいところです。
先ほどもお伝えした通り、子猫の頃に誤飲・誤食で治療を受けた猫でその後も誤飲・誤食を繰り返す猫は少なくありません。
また、猫の誤食や誤飲は処置のために全身麻酔を行うことも多く、全身麻酔に対するリスクも考慮する必要があります。(内視鏡をするにしても、開腹手術にしても麻酔が必要)
とくに高齢猫や持病がある猫では全身麻酔のリスクそのものが高くなるため、誤飲・誤食のリスクはより高くなると考えて良いと思います。
猫が誤飲してしまったと分かったら…
猫が何か誤飲や誤食をしてしまったと分かったら、速やかに動物病院で処置を受けることが大切ですが、病院に到着するまでに、家でできることを知っておくことは緊急時にはとても重要です。
■家で取るべき行動
猫が誤飲・誤食してしまったことに気が付いたら、まずは猫の様子を確認してください。ぐったりしていたり、呼吸が乱れたり嘔吐するなどの反応が見られる場合は速やかに動物病院で処置してもらいましょう。
また、猫が誤飲したと思われるものを吐き出したからといって安心はできません。誤飲・誤食しているものがすべて出てきたとは限りませんし、成分がすでに吸収されてしまっている可能性があります。
猫が「いつ」「なにを」「どれくらい」誤飲してしまったかを把握しましょう。
これらの情報は、動物病院で処置をスムーズに行うためにとても重要になります。
■動物病院での処置
まず、動物病院では誤食の情報や症状、腸の動き具合からエコー検査やバリウム検査により、猫が誤食・誤飲したものがどの辺りにあるのかを把握します。大まかに食道・胃・腸のどのあたりに異物があるのかによって処置が変わってきます。
・食道に異物がある場合
食道に物が詰まると、食道のすぐ隣にある気管にも影響が及び、呼吸困難を起こすこともあります。
また、吐きたそうにしたり、咳き込んだり、普段聞き慣れないような「グゥグゥ」という音が喉から聞こえることもあります。
詰まっているものを自力で吐き出させるのは困難なので、全身麻酔をかけての処置を行います。
・胃に異物がある場合
痛みが合ったり、胃を荒らす、嘔吐の原因になることがありますが、胃に留まっている間は大きな症状が出ないこともあります。
消化できるものや、とても小さいものの場合には経過観察で様子をみることがあります。
それ以外のものは、麻酔をかけて内視鏡か胃切開により取り出します。
吐き気を誘発する薬剤を使用して、胃内の異物を吐き出させることもあります。
・腸に異物がある場合
最も注意が必要なのが、異物が腸に到達してしまっているケースです。
異物が通過していく過程で、腸に炎症が起こり下痢などを起こしたり、異物が長時間留まることで粘膜が壊死を起こしてしまうことも…。
また、ひも状のものや布状のものは、食べたものを巻き込んで大きくなることもあり、腸閉そくに繋がることも。異物が完全に腸に詰まってしまうと、元気食欲がなくなり、一日に何度も嘔吐が見られるようになり、ぐったりとして非常に危険な状況になります。
異物が腸にあることが分かったら、麻酔をかけて切開手術で取り出すことも。
異物が詰まっている場所の腸が壊死を起こしている場合は、その部分の腸を切除する手術が同時に行われることもあります。
広範囲の腸がダメージを受けているようであれば、手術の難易度やリスクも高くなります。
■開腹手術は全身麻酔を伴う可能性が高い
猫が異物を飲み込んでしまった場合、緊急性が高いケースでは全身麻酔が必須の処置を行うことが多いです。
最近では精度が向上した内視鏡を用いて異物を取り除くことも可能になっていますが、猫の体は小さく、食道も細いので、犬よりも開腹手術を選択せざるを得ないというケースもみられます。
数字にしてみると、異物を飲み込んでしまった時に猫では手術を選択する割合は、子猫では24.4%、成猫では26.4%となっています。犬では約20%前後ですので、やはり猫にとっての誤飲・誤食のトラブルは犬などのほかの動物と比べてよりリスクが高いものということができそうです。
「猫の誤飲対策」を行おう
■基本は猫の手に届くところに置かない
猫の誤飲対策の基本は、猫が興味を持ったり食べてしまう可能性があるものは、猫の手が届く場所に置かないということ。これを徹底するだけでも誤飲・誤食のリスクはずいぶんと減らすことができるはずです。
猫の場合、高い場所に置いたとしても身軽で棚の上などに届いてしまうこともありますので、蓋つきの箱の中に入れる、重さがある扉の中に入れる、鍵をかけられる扉の向こうにしまうなどの工夫が効果的です。
カーペットやインテリアの一部をちぎって飲み込んでしまうようであれば、猫だけで留守番させるときにはケージに入れるなどの対策があります。
■特に注意が必要な「誤飲」について知る
猫が誤飲してしまう可能性があるもので、特に注意が必要なものを以下にリストアップしてみました。これらのものを誤飲・誤食してしまったことが分かったら、速やかに動物病院を受診するようにしてください。
・リボンやひも状のもの
・先のとがった画鋲、竹串、針など
・たばこ
・漂白剤
・保冷剤の中身
・猫に有毒な植物類(お花など)
これらのものは、猫が誤って飲み込んでしまうことがないように、注意が必要です。
猫が生活するエリアに置いておくことはなるべくせず、床に落としてしまったりしたら、すぐに拾う・拭き取るなどしてください。
とくに、リボンやひも状のものは猫のオモチャとしても使われることが多いのですが、使用するのは家族と一緒に過ごす時間だけにしておきましょう。
また、保冷剤の中にはエチレングリコールと呼ばれる成分が含まれるものがあります。エチレングリコールは大量に摂取すると腎臓の機能障害、神経症状などを引き起こします。
保冷剤として使用したことで、生の魚や肉のニオイが移ってしまっていることがあり、興味を持ちやすい傾向にありますので、注意が必要です。
おわりに
今回は猫の誤飲、誤食に関して知っておきたい情報をまとめてみました。
猫の誤飲や誤食は比較的よく見られるトラブルですが、きちんと対策をしておくことで防ぐことができるものでもあります。過去に誤飲や誤食で治療を受けた経験がある猫では再度同じように誤飲・誤食をしてしまう可能性が高いため、普段から行動を注意して見守るようにしてください。万が一望ましくないものを食べてしまった、飲み込んでしまったことが分かったらなるべく早く動物病院で相談するようにしてください。