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2022.03.17

猫の食物アレルギーとは?症状や対策など獣医師さんに聞いてみました。【#獣医師コラム】

猫の食物アレルギーとは?症状や対策など獣医師さんに聞いてみました。【#獣医師コラム】

猫の健康維持のためにさまざまなことに気を付けている方は多いと思います。その中でも心配される方が増えてきたものに「猫の食物アレルギー」があります。
人間では命にかかわることもあるアレルギーですが、猫の食物アレルギーの症状はどのようなものなのでしょうか?人間の食物アレルギーとの違いはどのようなことがあるのでしょうか?
また、猫が食物アレルギーを持っていることが分かった時や、アレルギーの疑いが強いことが分かったら、私たちはどのような対策をしてみるべきなのでしょうか?

今回は、猫の健康と食物アレルギーという項目について、獣医師さんに質問をしてみました。「うちの子もアレルギーなのかも…」と感じた時にチェックしてみてくださいね。

DOG's TALK

tamaの獣医さん 菱沼獣医師

tamaの獣医さん 菱沼獣医師

獣医学部を卒業後、動物病院での臨床・栄養指導を経験した後に公的機関で獣医師として勤務。現在はtamaのアドバイザー、商品開発などに携わる。大型犬、小型犬と一緒に暮らしていますが、猫のことも大好きです。

猫の食物アレルギーの症状はどんなものですか?

猫の食物アレルギーでは、人間のような強いアレルギー反応がみられることはほとんどありませんが、皮膚などのかゆみは比較的よくみるケースです。
それから、人間のアレルギーとは違い、複数の食材を組み合わせて作るキャットフードを主食としている猫の場合、アレルギーの元となる食材を特定することはとても難しく、非常に根気のいる作業になります。

そういった猫のアレルギーの特徴を踏まえたうえで、食物アレルギーによって引き起こされる症状としては以下のものがあります。

・なかなか収まらないかゆみ
・脱毛
・下痢、軟便など消化器系トラブル

猫がかゆがっていたり、同じような場所を繰り返し舐めるなどの行動を見せると、アレルギーを疑ってしまう方は多いと思います。
そして、直前に食べたものをアレルギーに結びつけてしまいやすいのですが、猫の食物アレルギーで現れる症状はアレルギー以外でも起こるもので、パッと見ただけでは原因を食物アレルギーだと判断することは難しいです。
猫のかゆみ、皮膚のトラブル、脱毛、下痢や軟便などが見られたら、まずは動物病院で相談をして、適切な方法で原因を探ってから、食事や生活を改善していくことをオススメします。

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tamaの獣医さん 菱沼獣医師

tamaの獣医さん 菱沼獣医師

かゆみなどのちょっとした体調不良を、穀類に代表される食物アレルギーに結びつけるようなプロモーションを行っているフードメーカーもあります。実際に、食事を変更したことでさまざまなトラブルが改善した例もありますが、それは一例であり、同じような症状が出ている猫すべてに合っている方法なのか、というとそうではありません。
猫にトラブルが起こる背景も猫によってそれぞれ異なりますので、気になることがあったらまずは動物病院で獣医師さんに相談をすることから始めてみてください。

猫の食物アレルギーが起こる仕組みって?

■猫の食物アレルギーが起こる仕組みって?

猫の食物アレルギーが起こる仕組みは、人間のアレルギー反応とほとんど同じです。簡単に言うと、体内に取り込まれた特定のタンパク質を免疫が敵とみなして攻撃をしてしまうことで、炎症が起こり、体調の変化が起こっています。
免疫細胞自体は、体を守るために必要な存在で、病原菌やウイルスなどの異物が体内に入ってしまった時に戦ってくれるものです。この機能がないと体内に入り込んだ病原菌やウイルスが増えてしまい、病気になってしまいます。

ところが、アレルギー反応が起こっている時は、本来は攻撃するべき病原菌やウイルスではないタンパク質を免疫細胞が攻撃している状態です。この異物への攻撃反応のひとつとして、炎症があり、炎症によってかゆみや軟便などが引き起こされているのです。

猫の食物アレルギーは免疫細胞が攻撃対象ではないタンパク質に反応してしまうことが原因ですが、そもそもなぜ免疫細胞が特定のタンパク質に反応するようになってしまうのか、気になりますよね。
でも残念ながら猫でも、人間でもアレルギーを発症してしまうきっかけや原因は、現時点では、はっきりとは分かっていません。人間では遺伝的な要因や疲労がたまっている時などに発症することが多いという仮説もあるようですが、猫でも同じように言えるのかなど、まだまだ議論の必要があるように思います。

■猫のアレルギーと血液検査の関係

食物アレルギーかどうかを判断するときに、猫の血液検査を行うことがあります。もしかすると、「血液検査をすれば猫が食物アレルギーかどうかが分かる」「血液検査をして引っかかった項目はアレルギーの原因になるから絶対に与えてはいけない」と思っている方もいるかもしれませんが、そうではありません。
アレルギーに関連して行う猫の血液検査は「アレルギー反応を引き起こす可能性があるタンパク質を絞り込む」ために行われています。
猫が食物アレルギーを起こしているのか、どの食べ物がアレルギーを引き起こしている原因なのか、といったことを確定させるには少し情報が足らない、ということです。

確定させるには、少し情報が足らないというのは、血液検査の結果の中には「偽陽性」と呼ばれる、アレルギー反応が起きていないのに陽性と出てしまうケースが関係しています。

健康的な猫であっても、以前食べたことがあるタンパク質や、日常的に食べたり、触れたりしているタンパク質に抗体が作られることがあります。このケースの場合、猫の体にアレルギー反応が起きていないのであれば、今まで通りにその食品を食べさせることも検討できます。

猫が食物アレルギーと分かったら。対策はどうするべき?


猫が食物アレルギーを起こしている疑いが強くなったら、私たちはどのような対策をするべきなのでしょうか?

■食物アレルギーを引き起こす、原因を調べるなら「食物除去試験」

食物除去試験とは、血液検査でアレルゲンとなる可能性がある食品をある程度絞り込んだあと、実際に猫のアレルゲンとなっている食品を特定するために必要な検査方法です。
血液検査の項目リストの中から特に疑わしいものを取り除いた食事を一定期間(4~8週間)与えて、アレルギー反応が見られないことを確認します。

その後、特定の原材料を順番に1週間程度与えて、アレルギーの反応が再びみられるかどうかをチェックしていきます。特定の食べ物でアレルギーの反応が再発したら、その食品がアレルギーを引き起こしている、ということになります。
この時、オヤツなどでもアレルゲンとなる可能性がある食品を与えないよう、注意する必要があり、指定された以外の食品を一切与えることができないので、猫も家族もかなりの根気がいる作業となります。

きちんと決められたとおりの手順を踏めば、アレルギーの原因となる食品を特定することができますので、深刻なアレルギー症状がみられる時には必須の手順となります。

■アレルギー項目の数値が高い食品を避けたフードを与える

血液検査や食物除去などを経て、猫のアレルギー項目の目星がついたのであれば、いわゆる除去食を与えることでアレルギー反応を防ぐことができます。

除去食とは、アレルギーの可能性があるタンパク質を含まない食事のことです。
基本的に、今までに猫が食べたことがあるタンパク質がアレルゲンとなるので、今まで猫が食べたことがないタンパク質(原材料)を使用しているキャットフードを選ぶことがポイントです。

この時、注意が必要なのが交差反応と呼ばれるもので、同じような種類の食べ物はタンパク質も近しい形をしていることがあり、違う食品であっても免疫細胞がアレルギーの原因物質と同じように攻撃対象とみなしてしまい、炎症が起こるケースもあります。
例えば、チキンにアレルギーがみられるならターキーやダックなどにもアレルギー反応がみられることがあります。

 

■こんなフードを探してみてはいかがでしょうか。

アレルギーの可能性がある猫の食事を探す時、猫が今までに食べたことがないタンパク質を使用している、珍しい原材料(希少タンパク)を使用しているかどうかを判断基準としてフードを選んでみてください。
キャットフードでたびたび見かける希少タンパクとして、カンガルー肉やダックなどを使用しているフードがあります。

それから、使用する食材を限定しているLID(原材料限定食)もオススメです。
アレルゲンになりうるのはタンパク質のみというアレルギーの特性を逆手に取り、原材料の種類を限りなく減らしてシンプルなレシピのキャットフードを与えることで、食べられるタンパク質を特定できるように作られています。

もちろん、アレルギーのある猫のために作られた療法食もオススメです。アレルギー対応の療法食は、タンパク質に反応するアレルギーの特性を活かし、タンパク質をさらに細かいペプチドやアミノ酸まで分解することでアレルギー反応を起こしにくくしているものがあります。

こういったキャットフードを与えて、問題なく食べられる食材を探していけば、食物アレルギーがある猫でも好みのキャットフードを見つけられるかもしれません。

おわりに

今回は猫の食物アレルギーの症状はどのようなものなのか、どのようにして起こるものなのかについてご紹介いたしました。動物病院でも「食物アレルギーでしょうか?」と心配されるご家族が多いのですが、実際は別の原因があったというケースも多いです。
猫の皮膚のかゆみや赤み、脱毛、下痢・軟便などを引き起こしている可能性のひとつとして食物アレルギーがあるのは確かです。猫のかゆみがみられる時は、アレルギー以外が原因となっている可能性も頭の片隅に置いておくと良いかもしれません。
動物病院でさまざまな観点から検査や観察を行って行くと、次第にトラブルの原因が見えてきますので、獣医師と家族が協力して猫のトラブルに対応していく形ができれば理想的ですね。

 

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