• コラム
  • スタッフコラム

2020.06.18

猫の腎臓病とリンの関係を知って体調管理を。

猫の腎臓病とリンの関係を知って体調管理を。

猫の多くがかかるといわれている腎臓病。この腎臓病と食事の中のリンのコントロールが大切だといわれていることをご存じの方も多いのではないでしょうか。
腎臓病は猫たちがいつまでも健康的に過ごしていくために防ぎたい病気ですが、腎臓病とリンにはどんな関係があり、腎臓病とリンのコントロールが関係しているのでしょうか。
今回は知っておきたい猫の腎臓病とリンの関係についてご紹介します。

猫の腎臓について知ろう

腎臓は、体内の血液をろ過して、尿を作る際に様々な物質を排出しすぎないようにするためのフィルターとしての役割を持っています。
血液には、全身の細胞にいきわたらせるための栄養や酸素などを届けたり、逆に細胞から出た老廃物を回収する役割を持っています。そのため、血液にはたくさんの物質が溶けているのですが、その中には排出しなくてはいけない老廃物のようなものと、再利用できる成分が混同しています。そしてこれらを「必要なもの」「不要なもの」に分けるのが腎臓の大事な役割です。

腎臓に届けられた血液は細動脈と呼ばれる細い血管から腎臓の糸球体と呼ばれる器官へと運ばれます。
糸球体では、血液の中で「体内に必要なもの」だけをこしとり、不要となった老廃物=原尿を排出します。原尿はさらに尿細管と呼ばれる管を通り、ろ過されておしっことして排出されます。

これらの血液をろ過して尿を作る過程に関係している、腎臓の糸球体から尿細管までの部分はネフロンと呼ばれています。

猫の腎臓病はなぜ起こるの?

猫の腎臓病は、血液から尿を作るネフロンの機能が低下したり、機能しなくなってしまうことで起こります。とはいえ、急に機能が停止してしまうのではなく、何十万ともいわれているネフロンが少しずつ機能を低下させていき、全体の半分程度までネフロンの機能が落ちてしまうと腎臓病のサインが出るようになるといわれています。
ネフロンは本来であれば、たくさん存在しているので、いくつかのネフロンの機能が低下したとしてもほかのネフロンがその働きを補うチームワークを発揮して、うまく処理をしてくれます。ところが健康的なネフロンの数が半分以下になってしまうと、処理が追い付かなくなってしまい、体調を崩してしまうのです。

猫はほかの動物と比較して、飲水量が少なく、尿の量も少ない動物です。そのため、血液をろ過して濃い尿を作る猫の腎臓には負担がかかっているため、猫は腎臓病になりやすいともいわれています。

また、最近では猫の腎臓のネフロンをお掃除するAIMタンパクと呼ばれるタンパク質の働きが、ほかの動物とは少し違う…ということが分かり、これが特に猫で腎臓病が多い原因なのでは?という研究が進められています。(詳しい猫のAIMタンパクと腎臓病との関係についてはこちら:猫で腎臓病が多発する原因を解明?!AIMタンパクとは?)
AIMタンパクを活用した薬の登場も予測されていますので、今後は猫の腎臓を取り巻く環境が少しずつ変化していくことになるのかもしれません。

リンという成分について

猫の腎臓病について調べていると、必ずと言っていいほど登場するリンという成分。この成分は猫の腎臓病とどのような関係があるのでしょうか。

リンは本来骨や歯を丈夫で硬く作るために活躍する栄養素ですが、ネフロンの機能が低下すると上手くリンを尿として排出することができず体内でリンの濃度が上がりやすくなります。
すると、体内で濃度が高くなりすぎたリンとのバランスを調節しようとして、カルシウムと結合させるために血液中にカルシウムを増やす指令を出すホルモンが放出されます。このホルモンは血液のカルシウム濃度が上がらない場合、骨を溶かして血中カルシウムを増やそうとします。リン、カルシウムの血中濃度が高い状態が続くと様々な場所や臓器で石灰化が進んでしまうことがあります。

腎臓をケアするためにできること

リンはタンパク質と相関関係にある栄養素といわれていて、高タンパクの食材ではリンも高くなる傾向があるといわれています。
しかし猫にとってタンパク質は重要な栄養素。タンパク質をまったく摂取しない、というのは現実的ではありません。ネフロンがまだ機能している段階の初期の腎臓病であれば、適度にタンパク質を摂取することも大切です。

ですので、腎臓病のケアとしてもリンを大幅に抑えるというよりも、猫の腎臓の状態に合わせて食事を選ぶことがポイント。

シニア期に入った猫や、健康診断や血液検査などで腎臓の機能を表す数値に変化がみられるようになってきた、などの段階から動物病院で猫の食事や生活スタイルについて相談し、一緒に食事を見直してみるのもひとつの手です。
腎臓の機能が低下している時にも使える、リンなどの老廃物を吸着し排出させる、腎臓の働きを補うサプリメントもありますので、そういったものを活用してみる時も段階別、状況別に合わせたものを選ぶのがオススメです。

おわりに

今回は猫に多い腎臓病とリンの関係についてご紹介しました。
猫の腎臓病は不可逆的な病気=一度失ったネフロンは元には戻らないといわれていますが、ネフロンは本来とても頑張り屋さんの臓器です。また、将来的にはAIMタンパクを活用した薬の登場などによって、猫の腎臓病へのアプローチが変わっていくかもしれません。状況に合わせてネフロンをケアする方法を組み合わせて、猫の腎臓を労わっていきたいですね。