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2020.09.10

コレって猫のアレルギー?皮膚のかゆみや下痢が見られて不安な時に知っておきたいこと

コレって猫のアレルギー?皮膚のかゆみや下痢が見られて不安な時に知っておきたいこと

猫の体調管理で気を付けたいポイントはいくつかありますが、その中でも心配される方が多いものに「猫のアレルギー」があります。
皮膚のかゆみや脱毛、下痢や嘔吐などが見られた時に、さまざまな情報を調べている内に「アレルギーかも」と不安な気持ちになってしまう方が多いようです。

不安になってしまうからこそ、猫のアレルギーについて改めて知り、猫の体調をチェックしてみてはいかがでしょうか。

猫のアレルギーの仕組み

■猫のアレルギーの種類について

猫のアレルギーは、人間のアレルギーと概ね同じで、アレルゲンとなる食べ物を食べることによって起こる食物アレルギーのほか、ハウスダストや花粉などのアレルゲンを呼吸を介して体内に取り込んでしまう吸入性アレルギー、皮膚などにアレルゲンが接触して起こる接触性アレルギーがあります。
アレルゲンのほとんどは、食品や接触したものに含まれるタンパク質だといわれています。

 

■猫にアレルギー症状が見られる時

アレルギー反応が見られる時、体内に取り込まれたアレルゲンを免疫が敵とみなして攻撃をしてしまうことで、炎症が起こり、体調の変化が起こっています。猫のアレルギー反応の強さについては、もちろん個体差がありますが、人間のアレルギー反応のひとつである、アナフィラキシーショックのような死に至るほどの強い反応は見られないといわれています。
ただ、強いかゆみが続いたり、下痢が続くなどの状態は猫と家族のQOL(Quality Of Life)を低下させるので、アレルゲンが分かっている猫の生活環境や食事には注意が必要です。

猫のアレルギーを調べるには

猫のアレルギーの診断は、優れた動物病院や獣医師でもとても時間を必要とする作業です。すぐに「これがアレルゲンです」と示すことは難しく、獣医師、家族も根気強く向き合っていく必要があります。
猫にアレルギーがみられるかもしれない、と思った時に行うことがあるのが血液検査です。猫のアレルギーを疑った時に行う血液検査には2種類あり、IgE抗体検査とリンパ球反応検査があります。

どんなものがあるの?猫のアレルギーの血液検査とは?


IgE抗体検査とは、血液中のIgE抗体が関係して起こるアレルギー反応を調べる検査です。
IgE抗体が関係するアレルギー反応は、比較的体内に取り込まれて短時間で反応が出るといわれています。
IgE抗体は、一連のアレルギー反応のきっかけとなる免疫物質のひとつで、アレルギーの傾向がある場合血液中に顕著に多くなります。
アレルゲンごとに異なった抗体が作られるといわれていて、それぞれのIgE抗体がどんなタンパク質に反応するのかを調べることで、アレルゲンをある程度絞ることができます。食品だけではなく、呼吸や皮膚の接触によってアレルギーが見られる場合にも用いられます。


リンパ球反応検査とは、IgEとは異なり、白血球の一種であるリンパ球が原因となって起こるアレルギー反応を調べる検査です。
リンパ球反応検査は、IgE抗体検査と比べて、時間が経ってから反応が見られるアレルギーに対応しています。食物アレルギーが疑われる時にはIgE抗体検査と合わせて行われることがあります。
その名の通り、どんな猫でも持っている血液中のリンパ球がどんなアレルゲンに反応するかを調べることでアレルゲンをある程度絞ることができます。

■ アレルギーの血液検査の結果について

アレルギーの原因となるアレルゲンを調べる際に用いられる血液検査ですが、残念ながら血液検査の結果でアレルゲンが確実に特定できるわけではありません。
血液検査の結果の中には「偽陽性」と呼ばれる、アレルギー反応が起きていないのに陽性と出てしまうケースも多くあります。健康的な猫であっても、以前食べたことがあるタンパク質や、日常的に食べたり、触れたりしているタンパク質に抗体が作られることがあるためです。このケースの場合、猫の体にアレルギー反応が起きていないのであれば、今まで通りにその食品を食べさせることが出来ます。
猫のアレルギーを疑い、血液検査を行ってたくさんの項目に反応している結果を見て「うちの子の大好物ももう食べさせられないんだ…」「食べられるキャットフードがない…」と悩まれる方も多いですが、血液検査の結果はアレルゲンとなっている可能性がある食品を絞り込む手がかりでしかありません。

より細かく検査を行うためには、次のステップを踏む必要があります。

アレルゲンを確定させる、食物除去とは?

■食物除去ってどんなもの?

食物除去とは、血液検査でアレルゲンとなる可能性がある食品の絞り込みを行ったあとに、猫のアレルゲンとなっている食品を特定するためにとられる方法のことです。
アレルゲンとなる可能性がある食品の絞り込みである血液検査を行った後に、実際にそれらのリストの中から特に疑わしいものを取り除いた食事を一定期間(4~8週間)与えて、アレルギー反応が見られないことを確認します。

その後、以前食べていた食べ物や特定の原材料を1週間程度与えて、アレルギーの反応が再びみられるかどうかをチェックしていきます。特定の食べ物でアレルギーの反応が再発したとき、初めてアレルギーが確定するということになります。この時、オヤツなどでもアレルゲンとなる可能性がある食品を与えないよう、注意する必要があります。

猫がアレルギーかも?と思った時に、まずはこんなフードを与えてみよう

■アレルギーのある猫のための除去食について


猫のアレルギー項目の目星がついた時に、いわゆる除去食を与えてみることも対策のひとつになります。
除去食とは、食物除去と同じように、アレルギーの可能性があるタンパク質を含まない食事のことです。
基本的に、今までに猫が食べたことがある食事がアレルゲンとなるので、今まで猫が食べたことがないタンパク源を使用しているキャットフードを選ぶことがポイントです。

■除去食になるキャットフードってどんなもの?

アレルギーの可能性がある猫の食事を探す時、猫が今までに食べたことがないタンパク質を使用している、希少タンパク源を使用しているキャットフードが助けになります。
今までに食べたことがないタンパク質であれば、アレルギー反応が引き起こされる可能性は低くなります。

それから、タンパク源を限定しているLID(原材料限定食)もオススメです。
アレルゲンになりうるのはタンパク質のみというアレルギーの特性を逆手に取り、タンパク質の種類を限りなく減らしてシンプルなレシピのキャットフードを与えることで、食べられるタンパク質を特定できるように作られています。


もちろん、アレルギーのある猫のために作られた療法食もオススメです。アレルギー対応の療法食は、タンパク質に反応するアレルギーの特性を活かし、タンパク質をさらに細かいペプチドやアミノ酸まで分解することでアレルギー反応を起こしにくくしているものが多いです。


こういったキャットフードを与えて、問題なく食べられる食材を探していくことで、アレルギーがある猫でも楽しめる食事を見つけることができます。

おわりに

猫のアレルギーを心配する方は多いですが、食物アレルギーであるかどうかの診断はいくつもの手順を踏む必要があり、獣医さんでも診断が難しい側面もあります。
アレルギーかもしれない、と不安に思うあまりにアレルゲンではない食材まで避けてしまうと、キャットフードを選ぶ楽しみや、猫にオヤツを与える楽しみまで失ってしまうことになり、とても悲しく感じてしまいますよね。

猫のアレルギー検査で、たくさんのアレルギー項目が引っかかってしまったとしても、アレルギー対応の療法食やLIDなどを試しながら、「猫の好物」でも食べられるものを探すことは可能です。

アレルギーが分かった、アレルギーの疑いがあるからと言って、必ずしも食事を制限する必要があるわけではありません。
今までに食べたことがないタンパク質源などを楽しんでもらったりしながら、選択肢を増やしていければいいですね。