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2024.11.21
猫の健康に役立つ糖、オリゴ糖について調査しました[#調査隊レポート]
猫の健康のためには、猫の食事に含まれる栄養についての理解も深めていきたいですよね。
しかしインターネットを調べていると、「これって本当?」と疑わしい情報や、不安な気持ちを煽るような情報を見かけることも少なくありません。そんな猫の栄養に関する栄養に関する情報から、今回は「糖」についてご紹介します。
「猫に糖分は不要」と言い切っている記事を見かけることもあります。でも、実際はどうなのでしょうか?本当に悪者なの?猫の健康維持に役立てられている糖分の存在についてもご紹介します。
「猫に糖分を与えてはいけない」って本当?
最初に結論から入ると「猫の健康維持のために、糖を与えてはいけない」というのは誤りです。また、猫が糖を消化できないというのも誤りです。
猫の食事に含まれる栄養が、極端に偏っていないことが大前提ではありますが、糖分の摂取によって猫の体調に悪い影響を与えるということはありません。
ただし、健康的な猫にとって糖分はほかの栄養と比較して、"優先度が低い"栄養とは言えると思います。
というのも、人間にとって糖は主なエネルギー源として使用されますが、猫の主なエネルギー源として使用されているのは、タンパク質、その次に脂質です。糖もまたエネルギー源として利用されますが、人間よりもエネルギーとして活用される量がはるかに少なく、あまり有効活用されることがないため、普段の食事における優先度は低いのです。
とはいえ、全くメリットがないということはなく、比較的エネルギーに変換されるスピードは速いため、緊急時の栄養補給源としては有用と言えます。
一方で、猫は「糖尿病」になることがあり、人間と同じように糖尿病と診断された猫では食事に含まれる糖質の制限が必要になるケースがあります。
猫が糖尿病になってしまう仕組み
猫が糖尿病になってしまうのは、人間の2型糖尿病とよく似た仕組みによるものだといわれます。
本来、血液中に含まれる糖の量=血糖値をコントロールするためのホルモン(インスリン)が食後などその都度放出され、血糖値が極端に高い状態が続かないようにコントロールされています。
しかし、何かしらの理由でこのホルモンに反応しなくなる、ホルモンが出ても量が極端に少なかったりして、血糖値に変化が見られなくなり、血液中の糖が吸収できないために血糖値が高いままになると、やがて「糖尿病」になります。
猫の糖尿病では、インスリンが出ているが不足している、もしくは、身体が反応しないという場合が多いようです。一度糖尿病を発症してしまった猫では、人間と同じように、適切な食事の管理と投薬によるコントロールが必要になります。
インスリンが出にくくなったり、出なくなったりする原因は生活習慣あるいは遺伝、その両方によって引き起こされると考えられています。
遺伝的な理由の部分はある程度仕方がない部分もあると思いますが、やはり猫の食事の偏りは避けたいところ。
それから、肥満も猫の糖尿病のリスクを高める要因の一つとなっています。
また、注意が必要なのはインスリンを作っている膵臓の健康状態。高脂肪の食事を与え続けたり、栄養バランスが崩れた食事を続けていると、膵臓に炎症が起こる「膵炎」を起こすことがあります。膵炎を繰り返しているうちに膵臓の働き自体が低下し、インスリンの分泌にも影響が出ることがあります。
猫の健康維持に役立つ糖分とは
糖類の中には、猫の健康維持に役立てられているものもあります。
代表的なものとしてオリゴ糖をご紹介いたします。
■オリゴ糖
オリゴ糖は、私たち人間にとっても非常に身近な成分です。ジュースやお菓子などにも使用されることがあり、身近なものですよね。砂糖の代わりにオリゴ糖を使用してお菓子作りや調理をする人もいるそうです。
このオリゴ糖には、腸内環境を整え、健康的なお通じを維持するのに非常に役立つ特長が備わっているのです。
オリゴ糖はその構造上の特性から、猫の持つ消化酵素では分解されず、そのまま大腸に届くという特長があります。
分解されることなく大腸まで届いたオリゴ糖は、こちらもお腹の健康維持に役立つ乳酸菌・ビフィズス菌のエサとなります。ビフィズス菌の仲間はオリゴ糖を分解する能力を持っているため、栄養素として吸収されることがなかったオリゴ糖は、初めて大腸の中でビフィズス菌の数を増やすのに役立てられるのです。
オリゴ糖自体は何か良い働きをするわけではないのですが、ビフィズス菌を増やすことで健康に良い影響を与える成分なのです。
また、腸内細菌の中にはオリゴ糖を発酵させる能力を持っている菌がいます。
これらの菌はオリゴ糖だけではなく、水溶性食物繊維も一緒に発酵させることで健康維持に役立つさまざまな成分を作り出します。
具体的には、酢酸、プロピオン酸、酪酸といった成分が作られます。これらの成分は、腸のぜん動運動(ウンチを腸の中を速やかに通していく運動)を促進したり、大腸のpH値を調整するなどの作用を持っています。
■オリゴ糖をより効果的に摂取しよう
オススメなのがヨーグルトなどのビフィズス菌と一緒に摂取する方法です。オリゴ糖を含んだ食事に一般的な無糖のヨーグルトにプラスして与えるだけでも腸内環境を健康的に維持するサポートに繋がります。
市販されているキャットフードや猫のオヤツでもオリゴ糖を含むものが多くありますので、そういったアイテムの中から選んでみてください。
オリゴ糖のシロップ等を与える場合、過剰に与えてしまうと、ウンチがゆるくなってしまう可能性もありますので、チコリ根(フラクトオリゴ糖源)などが原材料として使われているものを併用するのがオススメです。
■ オリゴ糖が猫の肥満の原因になるの?
オリゴ糖は糖の一種ですが、猫の消化器では消化吸収する能力がありません。消化吸収ができないので、エネルギー源として取り込まれることはありません。
「でも、オリゴ糖にもカロリーがあるんでしょう?」と、市販のオリゴ糖を使っている方は思われるかもしれません。その通り、オリゴ糖にもカロリーはあります。しかし、それは腸内細菌がオリゴ糖をエサとしたときに菌がエネルギーに変換、消費されるカロリーなので、猫や人間の体重の変化には関係しないのだそうです。
また、ほかの糖類のようにエネルギー源として吸収されないので、糖尿病の猫であってもオリゴ糖を与えることができます。甘みの強さも一般的な砂糖の約30%といわれています。
体重管理が必要な猫であっても、問題なく与えることができます。
おわりに
猫の食事におけるさまざまな栄養が持っている役割や働きを知ることは、健康維持に欠かせません。とはいえ、インターネット上には極端な情報が存在していて、判断に迷ってしまったりしまうこともありますよね。
今回の糖のように、偏った考え方で「猫にとって良くないもの」と決めつけられているものもあるようです。
しかし、実際はオリゴ糖のように、適切に取り入れることで猫の健康維持に役立てられているものもあるのが事実。
猫の健康のために適切な栄養バランスを長い目で維持していくことを心がけることをオススメしています。情報も栄養も、バランス感覚偏りがないように上手に取り入れていくことが大切ですね。