もっと知りたい、「タウリン」のこと！不足したら？なぜ必須？調査しました[#調査隊レポート]

猫の元気と健康を保つために必要な栄養素。その種類は多く、中でも食事から一定量を取り入れる必要があるものを"必須栄養素"と呼びます。
そんな必須栄養素の中から、今回は「タウリン」を取り上げます。

「タウリン」自体は、人間用の健康食品やドリンクなどで見かけたことがある人も多いと思います。
では、猫の健康維持における役割や、不足してしまった時に起こるトラブル、猫にとって必須栄養素となった理由は何なのか調べてみました。

猫たちの健康維持に役立つ情報として、ぜひ一度ご覧ください。

猫にとって必須栄養素の「タウリン」とは
不足するとどうなるの？重要なタウリンの役割
なぜ猫にとってタウリンが必須栄養素なのか
おわりに

猫にとって必須栄養素の「タウリン」とは

■タウリンの基礎知識

タウリン（taurine）とは体のほとんどすべての組織に存在している成分で、細胞を健康的な状態で保つ作用があるといわれています。
目、心臓や肺、肝臓、脳、骨髄などの生命維持にとても大切な器官に豊富に含まれていて、それぞれの部位で重要な役割を持っています。
特に肝臓では消化液の一種である胆汁酸の分泌を促して、消化やエネルギー代謝をサポートする働きがあるといわれています。

人間用の栄養ドリンクなどで「タウリン〇〇g配合！」と表記されているものがありますが、これはタウリンが肝臓の働きをサポートして食べ物の消化やエネルギー代謝を促進し、速やかに食べ物をエネルギーに還元すると考えられているからなのだそうです。
また、非常に再生能力が高いことから肝臓は沈黙の臓器とも呼ばれています。それは肝細胞をタウリンが保護し、再生を促しているからなのだそう。

それから、視力や心臓などの健康維持にも必須の栄養素として知られています。

■タウリンの栄養基準

以前、キャットフードや猫の栄養についての研究が進んでいなかった頃は、タウリンは猫の必須栄養とは考えられていませんでした。
そのため、栄養バランスが崩れタウリンが欠乏したことで体調を崩してしまう猫が非常に多かったのだそうです。

現在では、総合栄養食タイプのキャットフードではタウリンはきちんと基準(AAFCOでは、ドライフード:0.1ｇ以上、ウェットフード:0.2ｇ以上)が設けられています。

最低基準は設けられている一方、過剰な分は体外に排出されるため、上限は設けられていません。摂取量の上限を気にするよりは、いつでもしっかりと摂取できるように配慮したい成分といえます。

不足するとどうなるの？重要なタウリンの役割

猫が食事から十分なタウリンが摂取できない状態が続くと、「タウリン欠乏症」という病気になってしまいます。
タウリンが関係する臓器や機能は多岐にわたるため、タウリンが不足することで見られる症状もさまざまです。中には命にかかわる症状が出ることもあるので、タウリンがきちんと食事からとれているかどうかは非常に重要なポイントになります。

免疫系や肝機能、視力、心臓の健康維持に影響が出ることが分かっていますが、とくに猫では心臓病(拡張型心筋症)とタウリン不足が関係していることに注意が必要です。

その昔、猫が原因不明の心臓病で亡くなってしまうということが続きました。
このことを受け、獣医師たちが調査を行ったところ、心臓病になってしまった猫たちの食事には、十分なタウリンが含まれていなかったことが判明しました。
このことを受け、AAFCOをはじめとしたキャットフードの栄養基準でタウリンを十分に含むよう定められました。
猫にとってタウリンが十分に食事から摂取できているか、というのは命に直結する問題といえます。

総合栄養食の基準を満たすキャットフードを与えていれば、心臓病のリスクは大きく減少させることができますので安心してくださいね。

なぜ猫にとってタウリンが必須栄養素なのか

猫にとってタウリンが必須なのは、猫が純粋な肉食獣として生きてきたという歴史が関係しています。

実は、犬や人間では体内でタウリンを別のアミノ酸から合成することができます。この機能は特定の酵素によるものですが、猫はこの酵素がほかの動物と比較して少ないのだそうです。

野生の猫が食べている食事は、自分の手で捕まえた動物の、新鮮でとれたての生肉が中心。

新鮮な肉類(魚も)にはタウリンが含まれているので、日常的に十分な量のタウリンを食事から摂取することができていたのです。
また、猫は獲物を丸ごと食べるので、獲物の肝臓や骨髄などタウリンが集まっている部位もそのまま食べていました。
小鳥やネズミなどの小さな動物であっても、しっかりと必要な部位を食べることで猫にとっては必要な栄養を補うことができていたんですね。
だから、猫は体の中にタウリンを合成する酵素を持たずに進化したといわれています。

タウリンは加熱などによって失われてしまう特徴があるので、生の肉で取り入れるのが最も栄養価を損なうリスクが小さい方法と言えます。
野生の猫たちは効率的にタウリンを取り入れていたのですね。