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- 猫研究所
2021.03.11
猫がドッグフードを食べてしまった!キャットフードとドッグフードの違いって?
最近では猫と一緒に犬も一緒に暮らしているという家族も増えているようです。仲良く過ごせる猫と犬もいるようですが、そんな暮らしの中ならではのお悩みも出てきているようです。
今回はそんな猫と犬が一緒に暮らしている家族でたびたび起こる、猫がドッグフードを食べたがってしまうというケースについてスタッフ猫たちと一緒にご紹介します。
猫がドッグフードを食べてしまう!これって注意するべき?
猫と犬が一緒に過ごしていると、猫が犬のごはんを食べてしまうということがたびたび起こるようです。好奇心が強い猫の場合は、一緒に暮らしている犬の食事に興味を持ってしまい、犬と一緒になって同じものを食べてしまうようです。
ドッグフードに限らず、犬のオヤツを食べたがる猫も多いようで、一緒に過ごす時間が長いほど、犬と自分(猫)の間での仲間意識が強くなり同じものを欲しがる傾向があるのかもしれません。
なんだか微笑ましいような気がしますが、猫がドッグフードや犬用オヤツを食べてしまっても問題はないのでしょうか?
結論としては、総合栄養食や栄養補助食であれば原材料的には問題ありません。
猫にとって危険な成分と犬にとって危険な成分は共通しているものが多いです。猫が避けるべき食材として、代表的な例では玉ねぎやチョコレートなどがありますが、これらは犬にとっても危険な食材です。犬が安心して食べられるものであれば、猫にとっても安全なことが多いのです。
猫がドッグフードを食べてしまったからといって、ただちに体調に影響が出ることはないといえます。ですから、猫がドッグフードを食べたからといって慌てる必要はありません。
注意が必要な成分について
*1 ドッグフードの中には、プロピレングリコールという成分を含むものがあります。この成分は、犬では使用制限がない一方、猫の食事には使用することが禁止されています。体調に影響する可能性があるため、プロピレングリコールを含むドッグフードは原則猫に与えないようにしてください。
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ゴロー
そうなんでありますか!?ボクちん、てっきり犬さん用のものは猫には適していないのかと思っていたでありますよ。
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ランラン先生
猫にとって危険なものと犬にとって危険なものが重なっているというだけですので、継続的にドッグフードを食べていると栄養バランスが崩れてしまうこともあるんです。これから、その点についてご紹介しますね。
AAFCO基準でのドッグフードとキャットフードの違い
次に、キャットフードとドッグフードの栄養価の違いについてご紹介します。純粋な肉食動物である猫と、肉食寄りの雑食である犬ではやはり必須となる栄養素に違いがあります。
■タンパク質・アミノ酸の違い
純粋な肉食動物である猫は、犬と比較しても食事からより多くのタンパク質を取り入れる必要があります。猫の特長を表すように、ドッグフードと比較してキャットフードのタンパク質の最低基準は高くなっていて、26%以上です。ドッグフードの最低基準は18%ですが、猫が健康維持のために必要とするタンパクの量は犬よりもかなり多いのです。(いずれも乾物計算)
タンパク質を構成するアミノ酸をチェックしてみると、メチオニン+シスチン(含硫アミノ酸)ではキャットフードの方が高くなっています。また、厳密にはアミノ酸ではないものの、タウリンは猫にとっての必須栄養素です。タウリンはドッグフードでは必須になっていないので、ドッグフードだけを続けて食べさせていると不足することがあるので注意が必要です。
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ムー
タウリンは猫が肉食獣だからこそ必須の栄養素になっているって聞いたわ。
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ランラン先生
タウリンは肉や魚に多く含まれていますから、体重当たりで考えると犬より多くの肉を食べてきた私たち猫にとっては普通に暮らしていればあまり不足しない栄養素だったのかもしれません。
■脂質はキャットフードの方が高め
ドッグフードと比較すると、キャットフードの方が脂質の必須量が高めになっています。猫の方が犬よりも多くの脂肪を食事から摂取する必要があるのは、猫が肉を中心とした食事をしてきたことに関係があるようです。
その証拠のひとつとして、猫の必須脂肪酸として基準が設けられているものとしては、肉類に多く含まれるアラキドン酸があります。
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ランラン先生
脂質の基準はドッグフードでは5.5%、猫では9%(いずれも乾物計算)となっています。犬の基準値が低いように感じますが、一般的にドッグフードでは脂質の量が10%以上のものが多いそうです。
■ミネラル類について
鉄分や銅、カルシウムなどのミネラル類も、猫は犬よりも多くの量を必要とすることが分かります。亜鉛を除くほぼすべてのミネラル類の最低基準はドッグフードよりもキャットフードの方が多くなっています。
長期間にわたってドッグフードだけを食べ続けることで、ミネラル類が不足する可能性もあります。
■キャットフードだけに必須量がある成分
ドッグフードに必須量の基準がなく、キャットフードにのみ栄養基準が設けられているものにはアラキドン酸、ビタミンK、ビオチンがあります。これらの栄養は総合栄養食タイプのキャットフードを与えていれば不足することはないのですが、手作り食やドッグフードを与え続けると不足することがあります。
脂肪酸の1種であるアラキドン酸、脂溶性ビタミンのビタミンK、卵や肉に多いビオチン、いずれも肉食動物らしい必須栄養素ですね。
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ランラン先生
猫にとっての必須栄養素をチェックすると、やはり肉などに由来する成分が中心になっているのが分かります。
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ゴロー
ふむふむ。じゃあやっぱりお肉メインの食事の方が猫にとっては良いということでありますか?
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ランラン先生
そうとは言い切れないのが難しいところです。シニアになると腎臓の機能が低下しますから、高タンパクの食事に多く含まれるリンを抑えるために、適度なタンパク量でリンを控えた食事を選ぶ必要もあります。ライフステージや猫の健康状態に合わせて食事を選ぶことが大切です。
おわりに
基本的には、猫の方が犬よりも多くのタンパク質や脂質を必要とします。ですから、猫がドッグフードを食べ続けてしまうと栄養が不足しやすくなります。ただ、総合栄養食のキャットフードをメインに食べ、たまにドッグフードをオヤツのようにつまみ食いしてしまう程度であれば、あまり心配はいりません。
もちろん、キャットフードは猫にとって必須の栄養素を考えて作られています。栄養管理や健康維持を考えるのであれば、主食はしっかりとキャットフードにしていくことが望ましいです。