• コラム

2024.05.02

猫の熱中症に要注意!暑さに備える獣医師からのアドバイス

猫の熱中症に要注意!暑さに備える獣医師からのアドバイス

東京で、1カ月ごとの気温の変化を見ていくと、最も大きく平均気温が変化するのは4月から5月の間なのだそうです。
なんと、4月と5月の平均気温の差は5℃!暑い時期と言えば、真夏というイメージがありますが、急激に季節が進むのが初夏なのです。

暑くなってくると心配なのが、熱中症に代表される夏特有のトラブルです。すっかり日本国内の都市部では猛暑や熱帯夜が当たり前になりつつあり、またその観測時期も年々早まっているように感じます。

猫との暮らしの中で、避けたい暑さに関するトラブル。今回は早めに意識したい"猫の熱中症"について獣医さんからのアドバイスをお届けします。

DOG's TALK

tamaの獣医さん 菱沼獣医師

tamaの獣医さん 菱沼獣医師

獣医学部を卒業後、動物病院での臨床・栄養指導を経験した後に公的機関で獣医師として勤務。現在はtamaのアドバイザー、商品開発などに携わる。中型犬、小型犬と一緒に暮らしていますが、猫のことも大好きです

そろそろ熱中症を意識しましょう

熱中症というと、真夏を想像する方が多いと思いますが、5月の大型連休前後から熱中症のような症状で診察を受けることになる猫が出始め、ピークは真夏。
温暖化の影響がこんなところにも出ているのかもしれません。

熱中症は、高温多湿な環境に長時間晒されることで体温が上昇し、高体温及び脱水によって起こる病気です。
また、体温を発散する機能が低下している場合や、過度な運動によっても起こりうる全身に症状が現れる病気です。

熱中症の恐ろしいところは、家族が「おかしい」と感じたときにはすでに熱中症による影響が進行していて、手遅れになってしまうこともあるところ。
また、一度の治療ですぐに回復するようなものではなく、治療や特別な処置が継続的に必要になるというケースもあります。

猫にとっても、家族にとっても想像以上に大きなダメージとなりうるトラブルといえます。だからこそ、早め早めに熱中症を意識して、猫と暮らす空間の環境づくりをしていっていただければと思います。

こんな時に要注意!熱中症のリスクをチェック

熱中症が起こりやすい条件というのは、ある程度分かっています。気温の高さだけではない条件をチェックして、気を付けるべきタイミングを把握するヒントとしてご活用ください。

・気温が高い(30℃以上は危険)
・湿度が高い
・風が弱い
・日差しが強い
・換気されない室内
・エアコンを利用しない
・水分補給がスムーズにできない

・暑くなり始めの時期
・急激に気温が上がった日
・夜になっても高温(熱帯夜)

室内で暮らしている猫であれば、特に注意が必要なのは締め切ってしまった部屋で、急激に気温が上がるケースでしょうか。
また、普段気を付けているという人も、急に気温が上がるこの時期は特に注意してあげてください。
猫自身が暑さに慣れておらず、30℃以下の気温でも熱中症のような状態になってしまうこともしばしばあります。

猫の腎臓病と熱中症の関係

猫と暮らす方に、知っておいていただきたいことのひとつに、重度の熱中症は腎臓にも大きな負担となるということがあります。
熱中症が進行すると、腎臓の機能が破壊されて急性の腎臓病になるケースもあるのですが、このことはあまり知られていないように思います。
猫は徐々に腎臓の機能が低下する慢性腎臓病になる子が多いのですが、ぜひ夏場の熱中症にも気を付けていただければと思います。

慢性腎臓病により、もともと脱水気味になっていることもあり、高齢の猫ではとくに注意が必要です。加齢による認知機能の低下に伴い、暑さを感じにくくなるシニア猫も多くいます。
また、体の自由が利かずに涼しい場所に自主的に避難することが難しいこともあるので、十分に注意してあげてください。

猫が熱中症のような状態になってしまったら

では、猫が熱中症になるとどんな変化が見られるようになるのでしょうか?代表的なサインには以下のものがあります。

・息が荒くよだれを垂らす
・鼻や目、口の粘膜が赤くなる
・食欲がない
・心拍数の増加
・舌を出す
・動きや反応が鈍くなる


猫が暑さを感じている時、これらの変化が見られるようになります。こういったサインがみられる時には、速やかに涼しい場所に連れて行き、保冷剤で体を冷やしてあげながら、動物病院に電話して指示をあおぐようにしてください。

私たち人間と暮らす猫は快適に気温が調整された室内に慣れてしまい、気温の変化にうまく対応できず、体調を崩してしまうこともあります。暑い日には様子をこまめにチェックしてこれらのサインが見られないかを確認していくことが大切です。

 

熱中症になってしまった猫の応急処置

・涼しい場所に連れていく

まずは猫をエアコンなどがきいている涼しい部屋に連れていくことが大切です。直射日光が当たらない涼しい場所で、猫の体を冷やしながら、動物病院に相談しましょう。

 


・保冷剤などを使い体を冷やす

食品などに使用する保冷剤をタオルで包み、内ももや脇の下、首の回りを冷やしてあげるのは効果的です。
また、保冷剤が手元にない時には、濡らしたタオルをかけて扇いで風を当ててあげることで代用できます。

 

・呼吸が落ち着いたら水分を摂取させる

猫の呼吸が落ち着いたようであれば、無理のない範囲で水分を摂取させましょう。水分量が多いウェットフードやスープ、ミルクなどを飲ませるのもオススメです。

■ 猫の過ごす室温の管理について

猫が過ごしやすい室温はどれくらいなのでしょうか?
室温管理においては、夏の間は25℃前後が目安とすることが多いです。意外と高いかも、と思われた方が多いかもしれませんね。
猫はもともと砂漠地帯で暮らしてきた生き物で、快適に感じる室温は人間と近いのです。
とはいえ、日差しが入る場所と日陰では体感温度も大きく変わりますし、猫が長毛なのか短毛なのか、鼻がぺちゃっとした短頭種なのかによっても違いますので、ひとつの指標として考えてください。

また、肥満体系の猫は一般体型の猫ややせ型の猫と比べて、熱中症になりやすい傾向にあります。猫はそもそも放熱する手段が少なく、熱をため込みやすい上に、脂肪でさらに熱がこもりやすくなっているためだと考えられています。
ぽっちゃり猫は要注意です。

おわりに

初夏になって増えてくる猫の熱中症についてご紹介しました。熱中症と言っても、実は猫の腎臓にも影響することがあるトラブル。とくに厚さを感じにくくなっているシニア猫たちが過ごす部屋の環境については注意深くチェックしてあげてくださいね。
近年の温暖化の影響か、大型連休の頃には気温が30℃を超える地域も出てきます。急激に暑くなることも猫の熱中症のリスクとなりますので、一気に気温が上がるような予報が出ているようであれば、適度にエアコンなどにも頼りながら、室温管理をしていきましょう。