• コラム

2023.10.12

猫風邪とは?症状や原因・感染経路から治療法まで獣医さんが解説[#獣医師コラム]

猫風邪とは?症状や原因・感染経路から治療法まで獣医さんが解説[#獣医師コラム]

日本人に多い病気、と聞いて皆さまは何を思い浮かべますか?
実は、日本人に最も多い病気の一つは「風邪」です。少し前の調査になってしまいますが、全日本人の内、ピーク時には月に37万人もの人が風邪と診断されているそうですから、かなりのものですよね。

さて、この多くの人が経験する病気、風邪とよく似たニュアンスのものに『猫風邪』という病気があります。
人間の風邪ですと、ゆっくり体を休めればよくなる…というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。猫風邪も同じようにゆっくり体を休めさせればよくなっていくものなのでしょうか?
そもそも、猫風邪ってどんなもの?など、知っているようで知らない『猫風邪』について、獣医師さんに質問してみました。

DOG's TALK

tamaの獣医さん 菱沼獣医師

tamaの獣医さん 菱沼獣医師

獣医学部を卒業後、動物病院での臨床・栄養指導を経験した後に公的機関で獣医師として勤務。現在はtamaのアドバイザー、商品開発などに携わる。中型犬、小型犬と一緒に暮らしていますが、猫のことも大好きです。

猫風邪の症状とは

猫風邪は、猫に鼻水や目やに、涙、くしゃみなどの症状が見られる病気です。人間の風邪に似た症状が出ることから、「猫風邪」と呼ばれ、ウイルス性の感染症です。
ウイルス性の猫風邪は、非常に強い感染力を持っていて、同居している猫が居る場合は一頭が感染するともう一頭にも症状が出るようになることが多いのも特徴の一つです。

猫風邪の症状チェック

猫風邪の代表的な症状には以下のものがあります。

・元気低下
・くしゃみ
・食欲低下
・透明な鼻水や目やに(汚れが付いて黒色になることもある)
・細菌が悪さをすると粘性の高い黄色から緑色がかった(粘液膿性の)鼻水・目やに
・発熱
・よだれ
・結膜(白目)、瞬膜の充血や腫れ
・口内炎
 

比較的免疫力が低い子猫や高齢の猫、持病を持っている猫では重症化しやすい傾向にあります。
どちらかというと、保護猫や野良猫に見られることが多い傾向にあります。また、多頭飼育の場合は爆発的に広まるので、保護施設などでもたびたび集団感染がおこるようです。

猫風邪を起こすウイルスについて

猫風邪は様々な細菌やウイルスによって引き起こされますが、中でも注意が必要なのが猫ヘルペスウイルスと猫カリシウイルスという2つのウイルスによる猫風邪です。

■猫ヘルペスウイルスについて

猫ヘルペスウイルスは、猫の口や鼻、眼の結膜などの粘膜から感染します。
くしゃみで飛ばされた鼻水や涙、目やになどの分泌物に含まれる大量のウイルスを粘膜から取り込むことによって感染が広がります。
侵入したウイルスは猫の鼻、喉の粘膜で爆発的に増殖し、結膜や気管支に広がり、様々な症状を引き起こします。
粘膜表面に炎症が起こり、結膜炎や鼻炎、気管支炎などのほか、呼吸器系全体に影響を引き起こします。

猫ヘルペスウイルスは、一度感染するとその後回復したとしても、ウイルスそのものが残ります。
何かの拍子でこのウイルスが再度活性化することがあり、たびたびぶり返すようになることが多いです。とくに季節の変わり目は、ヘルペスウイルスによる風邪の再発が起こりやすい季節として知られています。

■猫カリシウイルスについて

猫カリシウイルスは、感染経路に関しては猫ヘルペスウイルスとほぼ同じ。
ただ、違うのは症状のある猫だけでなく、症状が回復した猫では30日以上、症状のない猫は長期間(具体的な期間は不明)にわたってウイルスを排出し続けるという特性をもっていること。
一度感染してしまうと、当分はワクチンなどのカリシウイルス対策を行っていないほかの猫と合流させることができなくなってしまいます。

基本的な症状は鼻水やくしゃみ、咳などですが、カリシウイルスの特長的な症状に「口内炎」があります。口内炎は猫にとって食事や水を飲むなどの基本的な動作を妨げ、食欲をガクッと低下させる厄介なもの。
猫が本来持っている自然治癒力を維持するためにも、しっかり食べさせたいものですが、口内炎ができているとそれが上手くできないことがあり、治療が長引くこともあります。
また、カリシウイルスは急性の肺炎が出るケースがあるほか、関節にウイルスが感染すると、足を引きずるような症状が出ることもあります。

猫風邪の感染経路

猫風邪は、感染した猫のくしゃみや鼻水、よだれなどが主な感染経路です。
子猫の場合は感染している母猫の母乳などから感染することがあるため、感染経路は多岐にわたるといえます。
また、猫風邪のウイルスは回復後も神経細胞などに含まれ、免疫力が低下したときに再発することがあります。
そのため、猫風邪にかかった猫については、日頃から予防対策を欠かさないようにしておくことが健康の秘訣です。

猫風邪の診断方法

下記は獣医師が実施する、猫風邪の診断方法です。

ウイルス分離

ウイルス分離とは、口や鼻のなかといった結膜の表面を、綿棒のようなスワブで拭き取った液からウイルスを分離する方法です。
ウイルスは生きた細胞のなかでしか増殖しないことから、培養細胞や鶏卵、マウスなどに感染させて増殖を確認します。
この方法でウイルスが検出できれば、そのウイルスが原因で猫風邪を引き起こしていると判断できます。

PCR法

PCR法(Polymerase chain reaction)とは、ごくわずかなウイルスでも検出して原因を究明できる方法を指します。
先述したウイルス分離よりも迅速な診断方法ですが、感度が高すぎてほかの原因でも陽性になることがあります。
ウイルスの遺伝子検出で陰性が確認された場合、猫風邪のウイルスによる症状が否定されます。

血液検査

血液検査とは、猫の血液に含まれている抗体の量を数値化して検出する手法を指します。
血中に猫風邪の原因となるウイルスの抗体が含まれている場合、ウイルスが原因で発症した可能性を提示できます。
しかし、ワクチンを投与されていたり、過去に感染していたりしても検出されるため、判断が難しくなります。

猫風邪の治療と家庭での過ごし方

猫風邪の治療そのものは動物病院で行います。猫が鼻水を垂らしていたり、目元が腫れていたりしたら、猫風邪の可能性があります。ウイルス性の感染症ですので、適切な薬の投与が必要となりますから、速やかに動物病院でご相談ください。
適切な治療を受ければ回復することが多い病気ですので、獣医さんと相談しながら治療を進めていただければと思います。

猫自身の体力がある程度戻ってくれば、自然と治癒していくことも多いので、体力が落ちないように栄養を補給させること、そして体をしっかり休ませることを意識して環境づくりをしてあげてください。

Q:猫風邪はほかの猫にうつるって本当?

A:本当です。非常に強い感染力を持っている病気です。家の猫が猫風邪になってしまっていることが分かったら、同居猫が居る場合は必ず「隔離」するようにしてください。

猫風邪になっている猫はケージに入れるか、生活スペースをほかの猫と完全に分けることが感染を広げないためには有効です。
また、猫風邪に感染している猫のお世話をした後は必ず手洗いを行ってから、他の猫に触れるようにしてください。
特に子猫、高齢の猫、持病を持っている猫では症状が重くなる傾向があります。風邪だからと言って侮ることは禁物です。
飛沫から感染するため、部屋やフードボウルなどの消毒も行ってください。

Q:後遺症が残ることはあるの?

A:一部残ることがあります。
子猫などで結膜炎や瞬膜に起きた炎症が酷い場合は、症状が落ち着いた後でも腫れてしまった粘膜が戻らず、一部を手術で切除する必要があるケースもあります。

とはいえ、基本的には健康的な猫と一切変わらない生活を送ることができる子がほとんどです。
ですが、先ほどもご紹介したとおり、ウイルスが残ってしまった場合、たびたび体調を崩すきっかけになることがあります。

Q:どれくらいで落ち着くことが多いの?

A:数日で済むこともあれば、長期間を要することもあります。

症状が軽い場合は数日~数週間程度で回復することもありますが、体の小さな子猫や体力のないシニア猫、持病を持っている猫は完治には非常に長い期間を要することも少なくありません。
体調不良が原因の場合や、口内炎などが理由で食欲がないときは、猫の状態によっては強制給餌や栄養剤の点滴を行うこともあります。
ほとんどの場合、動物病院で適切な治療を適宜行うことで少しずつ症状は落ち着いていきます。しかし、しばらくは再発を防ぐため、室内の保温と保湿にも引き続き気を配るよう指導されることが多いように思います。

Q:猫風邪が人に移ることはあるの?

A:基本的に、猫と人間ではウイルスが感染することはほとんどありません。

ウイルスの増える方法というのが、生き物の細胞の中に入り込み、その生き物の細胞の中にあるものを材料として新しいウイルスを作っていくというもの。
基本的にウイルスが増えるためには、ウイルス自身の材料を持っている細胞が必要になります。
人間の細胞の中にあるものを材料にするウイルスが猫の細胞の中に入っても、材料が違うのでウイルスが増えることはできません。逆も同様です。

猫風邪の対策

猫風邪にならないように、発症したあと早急に回復するためには、下記の対策を実践しましょう

定期的に予防接種を受ける

人間でいうインフルエンザのときと同様に、猫風邪についても定期的に予防接種を受けることで防ぐことができます。
100%防ぐことはできませんが、感染リスクを大幅に減らせるほか、感染しても症状を抑えられるのです。
予防接種を受ける時期については猫によりけりのため、かかりつけの動物病院に相談して実施しましょう。

保温・保湿を徹底する

猫風邪のウイルスは湿度が低下すると活発化する傾向にあり、体の冷えは免疫力を低下させます。
そのため、冬場は猫風邪を発症しやすい季節であり、保湿だけではなく保温による対策が重要になります。
一般的に、猫風邪を予防するための湿度は50%から60%程度、室温については22度前後が良いとされています。

ほかの猫との接触に注意する

先述の通り、猫風邪の感染経路はすでに発症している猫のくしゃみや鼻水、よだれなどになります。
外出から帰ってきた猫は猫風邪に感染している猫と接触している可能性があるため、十分な注意が必要です。
戻ってきた猫に不安を感じる場合は、後述するように体をキレイにしてあげましょう。

ほかの猫に触れたあとは手洗いを徹底し体をキレイにする

猫同士の感染経路については先述しましたが、実は人間を媒介にしても猫風邪を発症することがあるのです。
猫風邪を発症した猫に触ってしまい、その手や服にウイルスが付着することによって、ほかの猫にも感染してしまいます。
猫風邪だけではなく、ほかの猫に触れたあとは手洗いだけではなく、衣類を洗濯するなどキレイな状態を維持しましょう。

こまめに診療を受ける

猫風邪にかかってしまった場合、重症化してしまう前に動物病院で治療を受けることが重要です。
症状によっては複数回にわたって通院しなければならないことがあります。

おわりに

今回は「猫風邪」について基本的な情報をご紹介しました。
人間の風邪と共通している部分もあれば、猫特有の注意したいポイントもある病気です。基本的には治療に関しては動物病院と相談しながら、家庭では体を休ませることを意識して、リラックスして過ごせるように見守ってあげるのが良いかと思います。