- コラム
2023.08.24
猫は食中毒になるの?対処法は?獣医師さんに聞いてみました
私たち、人間では夏になると「食中毒」のリスクが高くなります。下痢や嘔吐などの症状のほか、脱水症状などにもつながる可能性がある食中毒ですが、猫も人間と同じようになってしまう可能性があるのでしょうか?
また、猫に食中毒のような症状が見られた時はどのように対処するべきなのでしょうか?
今回は、「猫は食中毒になるのか?」という疑問に対する答えと、万が一猫に食中毒のような症状が見られた時の対処法についてご紹介します。
猫の健康を守るために、ぜひご一読ください。
猫は食中毒になるの?
■猫も食中毒になることがあります
猫も人間と同じように食中毒になる可能性はあります。
食中毒は、食べ物の中で菌や菌が作った毒素が増殖してしまい、その毒素を体内に取り込んでしまうことで起こります。
本来、肉食動物である猫は人間と比べて酸性度が強い、強酸性(pH1~2)の胃酸を持っています。強酸性の胃酸は、食中毒の原因となる菌を胃の中で殺すことができるといわれています。(※ただし細菌によって作られた後の毒素までは胃酸で分解はできません)
猫は純粋な肉食動物であり、捕まえた獲物を骨や皮、筋まで丸ごと食べる動物です。これらの部位を消化吸収できるように、強い胃酸を持つようになったと考えられています。
そのため、野生の猫の仲間はあまり衛生的ではない環境、食べ物を食べたとしても食中毒にはなりにくいと考えられます。
しかし、現代私たちと一緒に暮らす猫は、野生時代のような消化しにくい食べ物を食べていません。そのため、殺菌能力を持つ胃酸が弱くなっていたり、胃酸そのものの分泌量が少なくなっている可能性も否定できません。
そのため、食事の中に含まれる菌そのものや毒素が原因となって体調を崩してしまう「食中毒」が起こる可能性は否定できないのです。
■猫の食中毒の症状
食中毒の症状として見られるものには、下痢、嘔吐、元気の喪失、発熱などがみられることがあります。
ただし症状から原因を特定することは難しく、素人判断は危険です。これらの症状がみられた場合は、動物病院で獣医師による適切な治療が必要となりますので、速やかに診察を受けるようにしてください。
猫の食中毒の原因となる菌について
食中毒を引き起こす代表的な細菌としては、サルモネラ、カンピロバクター、ウエルシュ菌などがあります。
これらの菌が繁殖する条件として、「温度」「水分」「栄養分」がそれぞれ十分にあることがあります。そしてこれらが揃いやすいのが、梅雨から夏にかけての期間になります。
生の鶏、豚、牛にもサルモネラ菌やカンピロバクターが生息していますが、30~40℃において極めて速く増殖するといわれています。暑い時期の室温でとくに増えやすいので、長時間ごはんを置いたままにしておくことは避けた方が安全ですね。
ちなみに、水分量が多いウェットフードやレトルトタイプのキャットフードは、一度加熱調理してあるので、食中毒の原因となる菌は開封前の時点では殺菌されています。
しかし、開封後は開け口から菌が入り、繁殖していくので、なるべく早く使用するのがオススメです。
ドライフードでも水分は含まれていますので、湿度が高く高温の環境で長く置いておくとカビが発生してしまうことがあります。
ちなみに、古いフードなどの酸化した油に含まれる物質によって下痢などが起きることもあり、これも一種の食中毒に含まれる場合があります。
猫の食事の安全を守るために
食中毒を防ぐための取り組みとしては、菌の繁殖を抑えることと、菌が繁殖する前に食べさせることが対策になります。
猫に手作り食やささみなどを与えるときには、加熱調理(中心部の温度が75℃ で1分以上)をして、なるべく早く食べさせるようにしましょう。
人間用の食事にも共通していることですが、包丁やまな板、食器などに菌が付着してしまうこともあるので、清潔に維持しながら、定期的な消毒を行うことで菌の繁殖を抑えることができます。
ドライフードの場合、使い切りの目安、保存期間は1カ月から1カ月半を目安として、なるべく早く使い切ることが基本です。お買い得なことが多い大袋なども、計画的に使用していく必要があるので、うちの子の食べる量を確認しながら、使っていくのがオススメです。
また、繰り返しになりますがウェットフードやレトルトを与えるときも、なるべく早く使い切るようにしてください。保存が必要な場合は、蓋やラップをして冷蔵庫で保存しましょう。
ウェットフードなどを使い切れない時には、冷凍させるのもひとつの方法です。
オヤツの保存状態は?酸化について
意外と見落としがちなのが、猫のオヤツの保管状態です。主食となるフードと比べて、おろそかになったり、長期間保存することになりやすいオヤツ。とくに保存がきくフリーズドライやジャーキーなどのオヤツですが、開封してから時間が経つごとに酸化が進み、また菌が繁殖していきます。
本来であれば、水分量が少ないこれらのオヤツは菌の繁殖は抑えられるはずなのですが、時間が経過することで脂質の酸化が進んでいきます。酸化した脂質は猫の体にとって有害になるケースもありますので、食中毒のような症状を起こす原因となります。
また、猫は酸化が進んだ食事は避ける傾向がありますので、食いつきが悪くなります。
おわりに
今回は猫の食中毒についてご紹介いたしました。食中毒そのものは、食べ物で繁殖してしまった菌、あるいは菌が作った毒素を取り込んでしまうことで、体調を崩してしまうことを指します。肉食動物のため、人間より強い胃酸を持つ猫であっても、場合によってはこの「食中毒」になる可能性があります。
夏の間はとくに雑菌の繁殖や酸化などのリスクが高くなりますから、健康維持のためにフードやオヤツの保存状態に気を付けてあげてくださいね。
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tamaの獣医さん 菱沼獣医師
獣医学部を卒業後、動物病院での臨床・栄養指導を経験した後に公的機関で獣医師として勤務。現在はtamaのアドバイザー、商品開発などに携わる。中型犬、小型犬と一緒に暮らしていますが、猫のことも大好きです。