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2020.10.01

猫って穀類を消化できないって本当?猫の消化について調べてみた[#調査隊レポート]

猫って穀類を消化できないって本当?猫の消化について調べてみた[#調査隊レポート]

「猫は穀類を消化することが出来ない」ということが言われることが多くなり、tamaに寄せられるお悩みでも「下痢に悩む猫にはグレインフリーの食事を食べさせた方が良いのでしょうか?」と質問されることも多くなりました。

でも、キャットフードの中には穀類を使用しているものも一定数存在しています。これってなぜなのでしょうか?
そして、本当に猫は穀類を消化することが出来ないのでしょうか?

猫の健康を願うスタッフが皆さまに代わって、さまざまなキャットフードの原材料や製造方法、猫の健康について調べてみるシリーズ。
今回は「猫が消化できない」といわれている「穀類」についてご紹介します。それでは、調査隊のレポートを猫と一緒にどうぞご覧ください。

猫の消化について知ろう

色々な形のハサミ(酵素)で栄養を吸収しやすく細かくしています。

色々な形のハサミ(酵素)で栄養を吸収しやすく細かくしています。

穀類の話に入る前に、猫の消化についてご紹介します。

猫に限らず、食べたものを体内に吸収するためには、血管やさまざまな細胞の壁を通り抜けられるほどに小さく小さく分解する必要があります。この食べ物を細かくしていく作業を「消化」と呼びます。
消化には大きく分けて2種類が存在していて、その片方は「物理的消化」。食べ物を噛み砕く、胃全体を大きく動かして内容物をかき混ぜる、といったものが当てはまります。

もう一方が、物理的消化によってある程度小さくなった食べ物をより細かくする「化学的消化」と呼ばれるものです。
この化学的消化の時に活躍するのが「消化酵素」です。
消化酵素はそれぞれ酵素の種類によって対応している成分が決まっていて、その対象をより細かく分解するハサミのような存在です。
たとえば、タンパク質を分解してアミノ酸にすることができるのはタンパク質分解酵素の働きによるものです。
そして、タンパク質と同じように穀類をエネルギーとして使用するためには、穀類のデンプンを分解する酵素が必要になります。

猫は穀類を消化することができないと言われている理由。

猫が穀類を消化することができない、といわれる理由の一つは、穀類を主食とする私たち人間と比べて唾液中にアミラーゼと呼ばれる酵素をほとんど持っていないことが関係しています。

アミラーゼは、穀類などに含まれるデンプンを分解する酵素。分解されたデンプンは糖になり、速やかに吸収されます。私たちがお米やパンを噛んでいる内に甘さを感じることがあるのは、このアミラーゼの働きによるものです。
しかし猫の唾液にはアミラーゼが含まれていないことから、猫は穀類を消化できない、できても苦手なのだと言われるようになったようです。

猫は本当に穀類が消化できないの?


猫は穀類が消化できないのか、というと決してそんなことはありません。たしかに猫の唾液にアミラーゼは含まれていませんが、膵臓から分泌される膵液にはアミラーゼが含まれていて、穀類を消化することができます。

もちろん、すべての穀類を消化することが出来るというわけではありません。
穀類に水分を十分に含ませ、加熱調理することで穀類に含まれるデンプンは消化しやすい形になります。白米を炊いたり煮込んだりすることで柔らかくなる、この現象をα化(アルファか)と呼び、α化したデンプンであれば多くの動物が消化できる状態です。

私たち人間でも、生の状態の米や小麦をそのまま食べても消化することができず、下痢になります。猫も同じで、生のままでは消化できませんが、α化されたデンプンであれば問題なく消化することができるのです。

白米を事前にα化したα米(アルファまい)という商品もあり、日本人にとってはα化=米というイメージが強いかもしれませんが、小麦やコーンといった穀類に含まれるデンプンも、α化することが可能です。白米は大丈夫だけど、小麦やコーンだから消化できないということはありません。

キャットフードにも穀類が使用されることがありますが、水を加えて加熱するというα化の工程が含まれているので、十分猫も消化できる形になっている場合が多いようです。


α化された白米などは、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維を適度に含んでいて、猫のお腹の調子を整えるのに役立つ場合もあります。

おわりに

今回は猫が消化できないと言われている穀類についてご紹介しました。猫は唾液にはアミラーゼを持っていませんが、膵臓から分泌される消化液にはアミラーゼが含まれていて、α化された状態のデンプンであれば十分エネルギー源として活用することができます。
もちろん、私たち人間のように穀類を主食とする動物と比べると、エネルギーに変換する能力は低いといえますが、穀類全般を食べることができないというわけではないのです。

キャットフードに使用されている穀類は適切にα化されたものがほとんどなので、猫も消化することができます。中には、穀類が適度に含まれたキャットフードを与えるようになってお腹の調子が整ったという猫もいます。
グレインフリーのキャットフードが人気ですが、穀類を使用しているキャットフードにも理由があります。原材料についてより深く知り、猫の体調に合ったフードを探す際の助けとしていきましょう。