2020.10.15
キャットフードの酸化防止剤が、危険って本当?[#調査隊レポート]
キャットフードに入っている成分について調べていると、「酸化防止剤」というワードに行きつくことがあります。この酸化防止剤、一部では「発がん性」や「危険」なんて言葉で説明されていることもあり、とても不安な気持ちになる人が多いようです。
キャットフードに使用されている酸化防止剤は、本当に猫にとって危険な物質なのでしょうか?
猫の健康を願うスタッフが皆さまに代わって、さまざまなキャットフードの原材料や製造方法、猫の健康について調べてみるシリーズ。
今回は「危険な物質」といわれている「酸化防止剤」についてご紹介します。それでは、調査隊のレポートを猫と一緒にどうぞご覧ください。
酸化防止剤ってどんなもの?
まずは、酸化防止剤とはどんなものなのかをご紹介します。
酸化防止剤とは、キャットフードの保存性を高めるために添加されるもので、脂質などの油分が酸化してしまうことを予防するために使われます。
キャットフードの脂質は空気に含まれる酸素と反応することで変質し、嫌な臭いの原因となり嗜好性に影響するだけではなく、下痢や嘔吐の原因となることがあります。
こういった事態を防ぐために酸化防止剤は使用されているのです。
酸化を防止すると言っても、酸素と油分などの反応自体を止めてしまうというものではありません。油分に代わり自らが先に酸化反応することで、キャットフードに含まれる成分の酸化が進んでしまうのを遅らせるというイメージです。
キャットフードに使用される酸化防止剤にはどんな種類があるの?
では、キャットフードに酸化防止剤として使用される成分にはどのようなものがあるのでしょうか?
■ミックストコフェロール(ビタミンE)
ミックストコフェロールは、複数のビタミンEを配合したものです。ビタミンEにはα(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)、δ(デルタ)という4つの形があり、これらをバランスよく配合しています。
ビタミンEは脂溶性抗酸化剤として、キャットフードの成分よりも先に酸化することでフードの酸化を防ぎます。
■ローズマリー抽出物
その名の通り、ハーブの一種であるローズマリーから抽出された成分です。ヨーロッパでは伝統的に食品の保存の際に活用されてきたハーブで、カルノシン酸、カルノソールといった成分を含んでいて、これらがキャットフードの成分より先に酸化されることで品質を維持します。
■アスコルビン酸(ビタミンC)
アスコルビン酸はビタミンCの別名で、強い抗酸化力を持っています。また、ビタミンCは参加したビタミンEを還元することで、ビタミンEの活性を復活させることが出来ます。ビタミンEとビタミンCを組み合わせることでより効果的に抗酸化力を発揮できるといわれています。
■エトキシキン
エトキシキンも酸化防止剤の一種ですが、化学的に作られた成分で、主に動物の食事においてのみ使用が認められています。これは、日本においては人間用の食品に使用できる食品添加物としての認可が下りていないからです。
犬では75μg/g以下に使用料に制限があります。
継続して与え続けることによる腎臓の機能などに影響が出ることが示唆されている物質です。
■BHA(ブチルヒドロキシアニソール)
BHAは化学的に作られている成分で、人間用の食品添加物として使用が認められている成分です。
ラット(ねずみの仲間)を使った実験によって発がん性が見られたことから「BHAは危険」と言われるようになりました。BHAを継続して与えられたラットにがんが見られたのは事実のようなのですが、がんが発生したのはねずみの仲間や鳥の仲間が持っている前胃という部分。この部分は猫や犬、人間にはなく、発がん性は認められなかったのだそうです。
また、日本国内で販売されるキャットフードにおいては、ペットフード安全法(愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律)でBHAの使用量の制限があるので、猫の体調に影響するほどの量のBHAが含まれているキャットフードを見つけることはまずありませんし、プレミアムキャットフードで使用されること自体非常に稀です。
■BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)
BHTも化学的に作られる成分の一種で、殺菌作用と酸化防止の目的で使用されています。食品添加物としても認可されていて、人間用のシリアルやチューインガムなどにも使われていました。
BHAとよく似た名前をしているために、発がん性があるように思われて、さまざまな調査が行われて発がん性は認められなかったものの、妊娠中に摂取すると子供の成長に影響することが分かったため、あまり使用されなくなっています。
ペットフード安全法によって使用量が制限されていて、猫の健康に影響が出るとされるほどの量が使用されることはまずありませんが、プレミアムキャットフードではこちらも使用されること自体ほとんどありません。
キャットフード選びのために
基本的にキャットフードに使用される酸化防止剤は、品質の維持のために使用されています。
海外から輸入する際には輸送に時間がかかり、酸化のリスクが高くなるほか、ドライフードなどでは一定期間保存ができることが求められます。その間に酸化が進んでしまうことを避けるためには、酸化防止剤の存在がとても大切なのです。
tamaでは、エトキシキンやBHAのような化学的な酸化防止剤が使用されていないことも、安全なキャットフードの基準のひとつとして考えています。
ローズマリー抽出物やミックストコフェロール、ビタミンCなどといった自然界に存在している成分を上手く酸化防止剤として活用し、酸化を防ぐ工夫を施したパッケージを使用したキャットフードをバイヤーがセレクトし、ご紹介しています。
おわりに
今回はキャットフードに使用される酸化防止剤についてご紹介しました。さまざまな成分が酸化防止剤として使用されていますが、日本国内で手に入れることが出来る酸化防止剤については、ペットフード安全法によってその使用量などに制限がかかり、基本的には猫の体調や健康に影響するものではないといえるのではないでしょうか。
とはいえ、やはり猫には少しでも品質の良いキャットフードを食べてもらいたいもの。キャットフードを選ぶ際のひとつの基準として、参考にしていただけると幸いです。