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2020.02.27

キャットフードの原材料の加水分解について調べてみました。#調査隊レポート

キャットフードの原材料の加水分解について調べてみました。#調査隊レポート

皆さま、猫たちの毎日の食事であるキャットフードを選ぶときにはどんな基準で選んでいますか?猫の好み、原材料の種類、製造国や栄養バランスなど、色々な基準があると思います。

でも、無視できないのは「安全性」という観点ですよね。tamaでお取り扱いしている商品たちは、いずれも独自の視点とバイヤーたちの厳しい目で安全性についてもチェックをした上で、信頼できるものだけを選んでいます。しかし、インターネットが発達している今、「○○ってあまり良くないらしい」とか「あれはやめたほうがいいよ」など、心配になってしまうような情報が飛び交っていて混乱してしまうことも少なくないですよね。

そこで猫の健康を願うスタッフが皆さまに代わって、さまざまなキャットフードの原材料や製造方法について調べてみるシリーズ。

今回扱うのは「加水分解」という処理がされた原材料についてです。それでは、調査隊のレポートを猫と一緒にどうぞご覧ください。

加水分解って一体なに?

言葉の意味としては、加水分解とは、特定の物質に対して水が反応し分解され、別の物質が生まれることを指します。
私たちがお米を食べて体内でデンプンを分解し、ブドウ糖を作る作用も加水分解に含まれますし、猫たちの消化の過程でも、体の中で食べ物を分解し、タンパク質からアミノ酸を取り出すなどの加水分解は行われています。
実は体内では日常的に行われている、とっても身近な現象なんですね。

では、キャットフードの原材料表記に登場する「加水分解チキン」や「加水分解フィッシュ」とはどんなものなのでしょうか?
これらは、チキンや魚などの原材料のタンパク質を吸収しやすくするために、あらかじめ酵素などを加え、消化に近い形でアミノ酸やペプチドレベルにまで分解したもののこと。
原材料をそのまま使うよりも、消化の面では負担が少なくなるという特徴があります。

加水分解した原材料を使用するメリット

猫たちにとって、チキンや魚のようなタンパク質源をそのまま使用したフードに比べて、加水分解した原材料を使用するメリットはあるのでしょうか?

一般的に、猫たちは食事から取り込んだタンパク質を消化器の消化液の働きによって分解し、やがて小腸で吸収されていきます。
加水分解された原材料では、この消化液による分解の工程の一部を省略し、最初からペプチドやアミノ酸の状態で体内に取り込まれるので、猫たちの消化器への負担を減らすことができるといわれています。

そのため、体質的に消化器系が弱い猫や、膵臓・肝臓(消化液の分泌にかかわります)などの病気の療養中の猫たちのための食事に、加水分解された原材料を使用することがあります。
もちろん、健康的な猫にとっても、アミノ酸の吸収が良くなるので、メリットとなります。

■ 食物アレルギーと加水分解について。

食物アレルギーがある猫の場合、予防や治療としてアレルゲンとなる食品を避けることが原則です。しかし、「チキン」にアレルギーがあるのにアレルギー配慮の療法食に「加水分解チキン」や「チキンペプチド(=ペプチドレベルまで加水分解されたチキン)」が使用されていることがあります。
これはアレルギー反応が引き起こされる仕組みが関係しています。

アレルギー反応は、一般的にアレルゲンとなる食材に含まれているタンパク質に免疫機能が過剰に反応することで引き起こされます。
タンパク質は分子量が8~15キロダルトン(ダルトン=分子などの大きさの単位)以上の大きさの状態で、アレルギー反応が出やすくなるといわれています。
逆に粒子の大きさが10キロダルトン以下の分子量では、アレルゲンを認識したとしても炎症物質を放出する細胞に情報を伝達しないため、炎症産物が放出されにくい=アレルギー反応が出にくいということが起きます。

このことをふまえて、キャットフードのタンパク質を事前に小さく、10キロダルトン以下のペプチドレベルまで分解しておくことで、アレルゲンとなる食材を使用していながら、理論上はペプチドが小腸に取り込まれてもアレルギー反応が出にくいフードを作ることが可能になります。「アレルギー対応食」と呼ばれているフードには、原則タンパク質にのみ反応するアレルギーの仕組みを利用して、加水分解した小さな単位のペプチドの形でアミノ酸を供給しているフードが多いようです。

とはいえ、既にアレルギー症状が出ている猫の場合は、加水分解されているとはいっても、アレルゲンを避けたほうが安心なのは変わりません。

加水分解された原材料は危険?

「加水分解物は危険!」と言い切る意見もあるようですが、キャットフードや食品に使用される加水分解された原材料のほとんどは、猫や人間が消化する際と同じく、酵素を使って分解されます。

例えば、自然の食品などにも含まれているタンパク質を分解する力を持っている酵素を「プロアテーゼ」と呼びます。プロアテーゼには、納豆菌から作られるナットウキナーゼやパパイヤのパパインなども含まれています。これらの消化酵素は、猫たちのサプリメントやキャットフードにも使用されることがあり、お腹の調子を整えるのに役立つ成分とされています。

tamaでお取り扱いしているキャットフードは、バイヤーが厳しい目線でチェックをした厳選されたものだけを扱っています。もちろん、加水分解された原材料を使用しているものでも、猫の消化の過程と同じように酵素の力を使用しているものですので、薬品や化学的な物質の影響は基本的にはないものと考えていただいて良いかと思います。

おわりに

加水分解、と聞くとなんだか難しそうな印象を受けてしまいますが、消化の過程を真似た処理だということが分かりました。野生動物でも、オオカミなどは消化能力がまだ低い子供に、母親が一度飲み込んで消化をした肉などを吐き戻して食べさせることがあります。胃の中で少し消化して、胃液(塩酸と消化酵素)で加水分解をした食べ物を与えている、ということもできそうです。
このように、動物たちにとって加水分解処理されたタンパク質は決して縁遠いものではありません。
名前の印象や一部の情報に惑わされないように、きちんと調べて納得した上でキャットフード選びをしていきたいですね。