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2021.07.01
キャットフードになぜ食物繊維?猫の腸内環境を整えるメリット
猫の毎日の食事となるキャットフード。日々の健康は食事から、とも言いますし、キャットフードの保証分析値や原材料をチェックする人も多いと思います。
キャットフードの保証分析値の中に、「粗繊維」と表記されているものがあります。これは、野菜などにも含まれている食物繊維のことなのですが、スタッフはこんな疑問を持ちました。
「猫って肉食動物なのに、繊維質って本当に必要なのかな?」「何か理由があって含まれているのかな?」
そこで、本日はキャットフードに繊維質が含まれている理由と、そのメリットについて調べてみた結果をご紹介します。
■ 食物繊維の定義とは
食物繊維は「消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分の総体」と定義されています。(厚生労働省 e-ヘルスネット「食物繊維の必要性と健康」より)
食べ物に含まれるタンパク質や脂質などは、消化の過程で消化液などに含まれる酵素の働きによって分解され、吸収されます。しかし食物繊維は消化酵素によって分解されることなく、吸収もされずに大腸まで届きます。
食物繊維というと、野菜などに含まれる細い糸のようなスジを思い浮かべる人が多いと思いますが、水に溶けてしまうものやオリゴ糖も含まれ、その形はさまざまです。
猫は肉食獣なのになぜキャットフードに繊維質が含まれているの?
ご存知の方も多いと思いますが、猫は「純粋な肉食動物」とも呼ばれていて、獲物の肉を主食としてきた動物です。
繊維質と聞くと主に植物性の原材料を思い浮かべてしまいますよね。野生の猫の仲間たちは野菜やフルーツを食べることはほとんどありませんから、違和感を感じるのだと思います。
ですが、繊維質には猫の健康維持、そしてキャットフードを作るために大切な役割を持っていることが分かりました。
理由:猫の腸内環境を整えるため
通常のキャットフードでは、繊維質の量は5%以下のことが多く、キャットフード全体に占める割合はあまり大きくはありません。
しかし、猫のお腹の調子を整えるために繊維質が重要な役割を持っています。
繊維質には腸内細菌のエサとなって腸内環境を整えたり、うんちを固める働きがあります。便秘や軟便など、お腹のトラブルが多い猫向けに作られている消化器系療法食では、繊維質があえて多めに含まれているものもみられます。
また、食物繊維は消化器内では分解・吸収されないので、食べ応えを出しながらカロリーをおさえるために使用されることもあります。
野生の猫の仲間では、獲物の被毛の一部や内容物ごと内臓を食べることで、一定量の繊維質(消化できないもの)を摂取しているとも考えられています。
キャットフードに含まれる繊維質は、大まかに2種類に分けられます。
■不溶性食物繊維
不溶性食物繊維は野菜などに含まれるものが多く、野菜のほかにも穀類や豆類、甲殻類の殻にも含まれています。
水分を保持して膨らみ、腸を刺激するほか、ウンチを固める働きもあり、スムーズなウンチの排出に役立ちます。
不溶性食物繊維には、セルロースやヘミセルロースと呼ばれる種類があります。
■水溶性食物繊維
水溶性食物繊維はその名の通り、水に溶けてとろみを出したり、ゲル状に固まる性質があります。水溶性食物繊維は主に腸内の善玉菌のエサになります。
水溶性食物繊維が十分でないと腸内細菌のバランスが崩れてしまい、悪さをする菌が増えやすくなるといわれています。
腸内環境を一定に維持するには必要不可欠な成分といえます。不溶性食物繊維には、ペクチン、グルコマンナンなどが含まれます。
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キャットフードの保証分析値で表示されるのは、不溶性食物繊維であり、水溶性食物繊維は表示されません。これは現代の技術では水溶性食物繊維の量を正確に計測するのが難しいためです。
猫の腸内環境を整えることのポイント。
■腸内環境は、絶妙なバランスを維持することが大切
猫の腸内環境を整えるためにとても大切な繊維質。猫の腸内にはたくさんの菌がいて、それぞれ絶妙なバランスを保って共存しているといわれています。
善玉菌、悪玉菌、どちらでもない日和見菌がバランスよく腸内に存在していて、少し善玉菌が優勢…という状態が理想的。
善玉菌だけを増やしたいと考えてしまいがちですが、特定の菌だけが異常に繁殖してしまうと、それが善玉菌であってもトラブルのもとになったりもするのだそうです。
■腸内環境を整えると健康的な免疫の維持につながる
腸内環境と免疫細胞の働きには、深い関係があります。実は、哺乳類の体内でもっとも多く免疫細胞が集まっているのは、腸内です。
腸内に善玉菌、悪玉菌、日和見菌がそれぞれバランスよくある環境であれば免疫系の働きがよく、一方で特定の菌が極端に多かったり、少なかったりと腸内環境に乱れが見られる時には、免疫細胞の働きも悪くなったという研究結果もあります。
下痢や軟便などといったお腹のトラブルだけではないのが腸内環境の奥深いところ。消化された食べ物の栄養を取り込むのも腸の役割ですし、腸が健康的に働いているかどうかが、猫の健康状態に大きく影響していくことになります。
少しでも長く、健康的に過ごしてもらいたいけれど、何から始めたらわからない、という時には猫のお腹の状態を意識してフード選びなどを始めてみるのもいいかもしれません。
■ ちなみに:免疫細胞と深く関係する腸内細菌
腸内細菌の中には、免疫を活性化させる物質を作るものがあります。
代表的な存在が、フェカリス菌です。プロバイオティクスなどとしてキャットフードなどにもよく使用されている菌です。
フェカリス菌は腸内で悪さをする菌の繁殖を抑制し、腸内の免疫細胞の働きを維持する成分を作ることができるそうです。
水溶性、不溶性食物繊維と、フェカリス菌などをどちらも組み合わせるとより効果的といわれています。
フェカリス菌は生きたままの菌でも、死菌(菌としての活性を失った状態)でも免疫系に役立つ特徴をもっていて、tamaで取り扱い中のキャットフードにもよく使われています。
おわりに
本日はキャットフードに繊維質が含まれている理由、そして腸内環境と猫の健康についてご紹介しました。猫は本来、肉食動物ではありますが、腸内環境を整えるために食物繊維を取り入れることで健康維持に役立つことが期待できます。
キャットフードに含まれている成分や原材料について、それぞれ少しずつ深堀していくことで、猫の健康についての理解も深くなっていくような気がします。
野生の頃と比較した場合はもちろんですが、人と暮らしている猫同士で比較した場合でも平均寿命は年々長くなっているといわれています。その一因として、腸内環境の健康維持ができるような食事を与えるなど猫のお腹に配慮したキャットフードを与える人が増えていることも関係しているのかもしれません。
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