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2024.02.01

猫は「ビタミン」をどうやって補給しているの?野菜、フルーツを食べる必要がないのはなぜ?

猫は「ビタミン」をどうやって補給しているの?野菜、フルーツを食べる必要がないのはなぜ?

子どものころ、「さまざまな食材をバランスよく食べましょう」と言われたことがある方は多いのではないでしょうか。
身体の健康維持には様々な栄養が必要になります。食材ごとに含まれる栄養の種類や量はまちまちなので、色々なものを食べることが結果的に栄養バランスを調整することになる、と考えられています。

でも、肉食動物である猫は……あれ?お肉ばかり食べてる?
ということで、今回は肉食動物である猫の食事と栄養バランスに注目。たとえば、「野菜」「フルーツ」などのイメージがある"ビタミン"、肉食中心の食生活を送っている猫はもしかしてビタミン不足なのでしょうか?
実際のところ、どうなのでしょうか。

猫にとっても「ビタミン」は必須の栄養素です

肉食動物である猫ですが、生命維持や健康維持のためにビタミンなどの栄養素は必須となっています。

ビタミン類にはさまざまな役割があり、中でも三大栄養素であるタンパク質・脂肪をエネルギーに変える"代謝"は、ビタミン類が不足すると十分に行えなくなると考えられています。
つまり、いくらタンパク質や脂質が豊富な肉類などの食事を与えても、十分にビタミン類を摂取できていなければ、エネルギーとして使うことができず、無駄になってしまうということです。

それから、もう一つ重要なのが、細胞を合成する際に使用されるという働き。
猫に限らず、すべての生き物は常に新しい細胞を作り、古い細胞と入れ替えて健康的な状態を維持しようとします。
しかしビタミンが不足すると、細胞の再合成が滞ってしまうことに。
体の部位によって細胞が入れ替わるサイクルには違いがあるといわれていますが、ビタミンが不足している影響で、皮膚や被毛のトラブルが現れることも少なくありません。

猫にとって必須のビタミン量

代表的な猫の栄養基準となっているAAFCOにも、ビタミン類の必要量が明記されています。代表的なビタミン類の数値は以下の通りです。
 

■ビタミンA(IU/kg):3332~333300

ビタミンAは、脂溶性のビタミンの一種で、動物の肝臓に多く存在しています。
人間や草食動物では、植物などに含まれるβカロテン(緑黄色野菜の色素)からビタミンAを合成することができるのですが、猫はβカロテンからビタミンAを合成することができません。
そのため、食事から補う必要があり必須の栄養素の一つとなっています。

■ビタミンD(IU/kg):280~30080

ビタミンDは、カルシウムやリンの代謝を調節するうえで重要な役割を果たすビタミンです。人間では日光を浴びることで体内で合成されるのですが、猫はいくら日向ぼっこをしても体内でビタミンDを作ることができないので、食事から取り入れる必要があります。
こちらも生き物の肝臓や、魚に含まれています。

■ビタミンK(mg/kg):0.1以上

血液の凝固に関係したり、体内で働く酵素をサポートするのが主な役割のビタミンです。ビタミンKが不足することで血液が固まらなくなることがあるほか、タンパク質の代謝にも影響しています。
一部の腸内細菌がビタミンKを合成していますが必要量に届かないため、一定量を食事で補う必要があり、必須栄養素に数えられています。

■ビタミンB群
ビタミンB1(チアミン)(mg/kg):5.6以上
ナイアシン(mg/kg):60以上
ビタミンB6(mg/kg):4.0以上
葉酸(mg/kg):0.8以上
ビオチン(mg/kg):0.07以上 など

ビタミンB群にはB1やB2といったさまざまな種類が存在し、それぞれの働きは微妙には異なりますが、主にタンパク質などからエネルギーや血液を作る際に活躍するほか、神経系の健康維持にも関わるといわれています。
肉や魚、レバーなどのほかバナナやパプリカといった植物性の食材にも多く含まれています。



■ビタミンE:(IU/kg)40以上

ビタミンEは細胞が酸化することを防ぐ、抗酸化ビタミンと呼ばれる栄養の一つです。ビタミンEに代表される抗酸化ビタミンは、細胞に参加ダメージが蓄積されて老化が進むことを防ぐとも考えられています。
人間の研究では、ビタミンEを適切な量取り入れることで腎臓病の機能が低下するスピードを緩やかにした、という報告もあるそうです。
植物油、穀類を含む植物由来のものに加え、レバーなど、いくつかの動物性食品にも含まれています。

■ちょっと意外な豆知識 猫はビタミンCを合成できます

人間では美容や健康に良いといわれるビタミンCですが、実は猫にとっては必須の栄養素ではないのです。その理由は、猫はブドウ糖をもとにビタミンCを体内で合成できるから!

しかし、食欲不振のために材料となるブドウ糖が不足していたり、ビタミンCを合成する肝臓の働きが低下していると合成能力が低下し、不足することもありますので要注意。
高齢の猫で食欲が低下し、肝臓の働きも落ちたためにビタミンC不足になってしまうこともあるようです。

猫の仲間はこんなものからビタミンを摂取しています

猫にとって必須のビタミン類は、肉や内臓に含まれるものが多いことに気付かれた方が多いと思います。
そう、野生で生きてきた猫の仲間は、獲物の肉と内臓を食べることで十分に必須ビタミンを補うことができるように進化してきました。だから、完全な肉食獣である猫にとっては「お肉と内臓」こそが理想的なバランスの食事と言えるのかもしれません。
人間からすると「お肉ばかり食べて大丈夫なのかしら」と心配になってしまうかもしれませんが、問題ないのです。

それから、動物の生肉に含まれる血液や骨髄なども重要な栄養源として食べられていました。全身に栄養を届ける血液にはさまざまな栄養が溶け込んでいますから、それもしっかり摂取することで栄養補給をしていたと考えられています。

一方で、人間がフルーツや野菜などから補うことが必要なビタミンCは自らの体内で合成することができます。つまり、人間とは違ってフルーツや野菜などを積極的に食べる必要がないということ。
このことも、猫が純粋な肉食動物と呼ばれる理由のひとつです。

とはいえ、人間と暮らすようになった猫たちは、野生動物を捕まえて丸ごと食べるような食生活を再現するのは難しいというのが現実です。
ですから、総合栄養食の基準を満たすキャットフードを適切に使うことで、しっかりと栄養バランスを意識することが大切なのだと思います。

おわりに

今回は、猫の必須栄養素の中からビタミンに注目して、気になるポイントをご紹介いたしました。
野菜やフルーツなどに含まれるビタミン類は、猫にとっては必須ではなかったりもするので、積極的に食べさせる必要がないのです。
猫たちが食事から取り入れるべき必須ビタミンの多くは内臓などに多く含まれているので、獲物を丸ごと食べることで必要な栄養を十分に取り入れることができていました。しかし、私たちと暮らす猫たちは、獲物を捕まえて食べることも減ってきています。
そこに(内臓や骨髄を含まない)肉ばかりを食べさせてしまうと、栄養バランスが崩れるという結果になってしまいかねません。