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2023.04.20
猫も花粉症になるの?症状とは?猫の目ヤニや涙、くしゃみが気になったら
春の健康のトラブルの一つが「花粉症」ですよね。春先のものが最もよく知られていますが、夏や秋に飛散のピークを迎える植物もあり、実は1年を通して何かしらの花粉症は存在しているといわれます。
これだけ多くの人が悩んでいる花粉症ですから、猫も花粉症になる可能性があるのかも…と思った方がいるはずです。
実際のところ、猫に「花粉症」はあるのでしょうか?獣医さんに解説してもらいました。
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tamaの獣医さん 菱沼獣医師
獣医学部を卒業後、動物病院での臨床・栄養指導を経験した後に公的機関で獣医師として勤務。現在はtamaのアドバイザー、商品開発などに携わる。中型犬、小型犬と一緒に暮らしていますが、猫のことも大好きです。
猫には「花粉症」という病気はありません。
結論から言うと、猫には「花粉症」という病気はありません。
人間の「花粉症」は医学用語ではなく、正式名称は「季節性アレルギー鼻炎」です。その名の通り、特定の季節に引き起こされるアレルギー性の鼻炎の中の一つの俗称が、「花粉症」です。
日本国内では、春先に一気に飛散のピークを迎えるスギやヒノキ花粉に対してアレルギー反応を示す人があまりにも多いため、ほかのアレルギー性の鼻炎と区別するために「花粉症」という呼称が定着しています。
猫にも「アレルギー性鼻炎」がみられることはあります。ただ、人間のように顕著に植物の花粉が原因となっている事例が多いわけではありません。
まるで人間の「花粉症」のような症状が猫にみられている場合であっても、「花粉症」ではなく、別のことが原因となっている可能性もありますから、気になることがあったら動物病院で検査を受けてみてくださいね。
人間の花粉症の主な症状は、鼻の三大症状(くしゃみ、鼻水、鼻づまり)のほか、目の症状(かゆみ、涙、充血など)、その他にのどのかゆみです。
体質によっては、皮膚のかゆみ、下痢、熱っぽい感じなどの症状が現れることもあるようです。
似たような症状が気になる時、猫の花粉症を疑う方がいます。
とはいえ、症状だけでは病気の診断はできません。さまざまな検査を行い、これらの症状の原因を特定していくことが大切です。
今回は、猫でもたびたび見られる鼻水、くしゃみと涙や目ヤニといった症状がみられるときに考えられるトラブルについてもご紹介します。
猫の鼻水、くしゃみの主な原因
猫の鼻水やくしゃみの原因となる可能性があるトラブルには以下のものがあります。
■猫風邪
子猫や免疫力が低下した猫に多いのが、猫風邪です。猫風邪は、主にウイルス性の感染症で、長期間体内に潜伏してから発症することが多いといわれていて、症状が落ち着くまでそれなりに時間がかかります。厄介なことに、ウイルスの種類によっては症状が落ち着いた後も体内に残り続け、体力が低下したときにぶり返すこともあります。
完全室内飼育の猫よりも野良猫に多く見られ、保護されたばかりの猫から家庭の猫に感染することも多くあります。
子猫や高齢の猫では重症化することもありますので、これらの世代の猫で鼻水が見られたり、保護した猫が家にいる場合は動物病院で速やかに診察してもらってください。
■歯周病
猫の70%は3歳までに歯周病を発症するというデータもあり、非常に多くみられるトラブルの一つが歯周病です。また、歯周病は7歳以降の猫でとくに発症率が高くなっています。
猫の歯周病は、歯の根元を覆う歯肉(歯ぐき)や周辺の組織の炎症を中心として、それに関連するさまざまなトラブルを指します。
歯周病が進行した猫は、歯周病菌が周囲の組織を溶かしてしまうことで強い痛みを感じます。また炎症が歯茎だけではなく、顎の骨や鼻腔(鼻の穴の奥)まで広がり、くしゃみや鼻水を起こすこともあります。
重度の歯周病では強い痛みによって食欲が著しく低下してしまい、ほとんど食べることができなくなるほか、顎の骨が溶けてしまい、食べものを噛み砕こうとしただけで、骨折したり、頬に穴が空いてしまうというケースもあるようです。
鼻水が出るようになるほか、口臭がきつくなっていたり、よだれを垂らすようになっている、固いものを食べなくなったなどの変化がみられている場合は、動物病院でこのことを伝えたうえで診察を受けるようにしてください。
■アレルギー(鼻炎)
猫もアレルギー反応によって鼻炎を起こすことがあり、そのせいで鼻水が出るようになることがあります。家の中を清潔に維持し、換気を意識してハウスダストが家の中にたまらないような環境づくりをしてみてください。
ただ、猫のアレルギーは鼻炎よりも皮膚や消化器系に影響が出るケースの方が多い傾向にあります。
猫の涙や目ヤニの主な原因
猫はきれい好きな動物なので、目ヤニや涙が出ても自分で顔を拭ったり、プルプルと首を振った時に飛散させます。
寝起きの時などには目ヤニや涙が出ることもありますが、健康的な猫であれば目ヤニや涙が出たままになることはあまりありなく、量も多くはありませんので自分でキレイにできます。
目ヤニや涙が多い体質の猫や、短頭種の猫では上手く涙が流れず猫自身のグルーミングだけではキレイにならず、涙焼けなどのような状態になることもあります。
猫の目から涙や目ヤニが出ている、と気が付いたら「一時的なものではないか」「その状態がどれくらい続いているのか」を観察してみてください。
■被毛が目に入ってしまった
顔周りの被毛が目に入ってしまうことがあり、ずっと目の中がゴロゴロしているような状態になることも。
猫の目をよく観察してみると、たまに毛が入ってしまっていることがあります。人間でも目の中にまつ毛などが入ってしまうことがありますよね。
でも、この時手などで毛を取り除こうとするのは危険です。自然に涙などで流れるのを待ってください。なかなか取り除かれない場合は、動物病院で相談してみてください。
■結膜炎、猫風邪など
目の中に雑菌が入ってしまうことで結膜炎を起こすと、瞬きがしにくそうにするなどの変化が見られます。目を細めるような状態が続くこともあるようです。雑菌が繁殖してしまうと炎症が瞬膜にも広がり、目が腫れあがるなどの症状が出ることもあります。その際に、涙が出たりドロッとした目ヤニが出ることが多いです。
猫風邪でも同じように炎症が目に広がったために涙が出たり、目ヤニが増えることがあります。
結膜炎も猫風邪同様に感染力が強い病気ですので、同居猫がいる場合は生活スペースを分けるなどして感染させないようにすることが大切になります。
■物理的にケガをしている
猫は基本的に高い運動神経を持っていて、運動するのが大好きな猫もいます。子猫や若い猫であれば特にそうですが、はしゃぎすぎて勢いよく物や壁などにぶつかってしまい、ケガをしてしまうことも。
猫が目の周辺をケガしてしまうと、その痛みや違和感から目元を良く拭うようになったり、涙や目ヤニが出るようになることがあります。
■体質的に涙が出やすい
体質的に涙があふれやすい体質の猫もいます。
目の表面を覆う涙を排出するための器官を鼻涙管と呼びます。目であふれそうになった涙を鼻に流して排出するのですが、遺伝的にこの鼻涙管が上手く機能していない猫もいます。
アレルギーの影響で涙が出やすい子もいます。ハウスダストなどにアレルギーがある猫では、涙が出やすくなることがあるようです。
もちろん、花粉が原因でアレルギー反応を示すこともありますが、何がアレルギーの原因(アレルゲン)になっているかはきちんと検査をして判断する必要があります。
猫に「花粉症」に似た症状が見られたら速やかに病院へ!
猫に花粉症に似た症状がみられる原因には、さまざまなものが考えられることをご紹介してきました。時期的にも症状も、花粉症に似ている…といった場合でも、原因はさまざま。
猫の辛そうな症状を和らげるためには、適切な対処を行うことが何より大切です。そのためには、獣医師に以下のことを意識して正しく情報を伝えるようにしてください。
・いつごろからその症状が見られるのか
・ほかに変化はみられるか(食欲、トイレ、生活習慣などの変化)
・同居猫はいるのか、引っ越しなどの環境の変化はあったか
おわりに
今回は、猫に花粉症に似た症状が見られるときに考えられる原因についてご紹介いたしました。厳密には猫には花粉症はないのですが、似たような症状が見られるトラブルはいくつかあります。
それぞれ原因が異なりますので、きちんと原因を調べて対処していくことが大切です。気になる症状が見られるときは速やかに動物病院で相談するようにしてくださいね。