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2023.02.16
キャットフードの謎あれこれ~製造工程編~
猫の食事の定番、キャットフード。キャットフードと一言でいっても種類はさまざま。ドライフード、ウェットフードのほかにも、ジャーキータイプのものやセミモイストフードと呼ばれるものもありますよね。
でも、そのキャットフードについて、まだまだ知らないことや「これってどういう意味?」と不思議に感じていることも多いのではないでしょうか?
そこで今回は、キャットフードの謎に迫るシリーズの第2弾として、キャットフードの製造工程に関する4つの疑問についてお答えします。
キャットフードと一言で言っても、粒状のものから、食材の形状が残ったものまで、多種多様なものがあります。
使用する原材料や配合比率、独自のレシピや製造方法で作っているものも多くありますので、今回ご紹介するものは一例としてお考え下さい。
ドライフードの製造工程って?
ドライフードについては以下のように定義しています。
"動物性タンパク質、穀類等の原材料を混合・粉砕し、エクストルーダーで加熱・発泡・成型し、油脂やプロバイオティクスを吹きかけて乾燥した粒状のペットフードです(水分含有量はおおむね 10%以下)。"
複数の原材料を混合し、エクストルーダーを使用した上で水分量が10%以下のフードをドライフードと定義しています。ドライフードの製造の大まかな流れを以下に図で示します。
・原材料の搬入
猫にとって必要な栄養を含む原材料を工場に搬入します。
・計量・混合・粉砕
原材料を計量したのち、混ぜたりしやすい形に混合したり、粉砕します。
・エクストルージョン
エクストルージョンは、エクストルーダーと呼ばれる機械を使用して行う工程のことです。
エクストルーダーとは、粉体状またはペースト状の原料を混ぜ合わせた後に、高温の状態で加熱、装置内のスクリューで加圧し、押し出すことによって成型、加工する多機能の食品加工機器のことをいいます。
押し出して成型するというところから(EXTRUDE:押し出して成形する)という名前が付けられています。
エクストルージョン加工により、デンプンをアルファ化し消化を可能にしています。また、加工後のフードは、粒状になっています。
・乾燥・冷却
エクストルージョン加工後のフードは高熱になっていますので、冷ましながら乾燥させてフードの水分を飛ばします。
その後、微生物が利用できる水分となる結露を防止するため、粒を一定温度まで冷却します。
・コーティング
必要に応じて、熱に弱いオメガオイルやプロバイオティクスなどをキャットフードにコーティングします。詳しくご紹介します。
・製品貯蔵
さらに、清潔な環境下で微生物などが繁殖しないように乾燥させます。
・計量・梱包
それぞれのサイズに合わせて計量し、パッケージ詰めを行います。この時、一定の品質を満たしていない粒や異物がある場合は取り除きます。
多くの工程を踏んで初めてドライフードが作られていることが分かります。
もちろん、メーカーによっては全く異なる工程でフードを作っているケースや、順序が異なっているケースなどもあります。
なぜキャットフードのオイルコーティングは行われるの?
オイルコーティングされたキャットフードは酸化が進んでいる、という広告などを目にしたことがある方もいるかもしれません。
でも、それは正しい情報ではありません。実は、オイルコーティングは脂質の酸化を防ぐために取り入れられている工程なのです。
オイルコーティングとは、熱による酸化を避けてキャットフードにオイル(油分)を含ませる工程です。
オイルコーティングが一般的になる以前は、他の原材料と脂質を含む原材料を混ぜて、加熱加圧加工を行っていました。そのため、酸化しやすい不飽和脂肪酸の酸化が進んでしまうことも発生していました。
現在では、キャットフードの粒を作った後、冷やしてからオイルをスプレーコーティングされています。そのため粒表面がベタベタしてオイリーになり、健康的でないよう印象を持たれることもあります。しかし、最新技術として、油(オイル)を真空状態でスプレーコーティングする方法が開発されました。
真空で冷えたフードの粒に油(オイル)を吹きかけることで、製造工程でオイルが加熱によって酸化しないだけではなく、ぎゅっと粒の奥まで油(オイル)が浸透します。油(オイル)が粒にきちんと浸透しているので、ムラになりにくく、まんべんなく成分をしみ込ませることができます。
油(オイル)は粒の奥にしみ込んでいますので、最初から練りこむのと同じように油(オイル)が染み出したりすることもなく、ベタベタ感も軽減できています。
熱に弱く、酸化しやすい成分を配合するための最適な製造方法で、専用の機械を使用しています。
適切な方法でオイルコーティングがされているフードなら、酸化が進みやすいということはなく、健康に役立つ脂肪酸を含んだフードに仕上がります。
ウェットフードの製造工程って?
最後に、ウェットフードの一般的な製造工程をご紹介します。缶詰、アルミトレイ、レトルトパウチ、カップなど、ウェットフードにはさまざまなタイプのものがありますが、いずれにも共通しています。
・原材料の搬入
ドライフードと同様、原材料を工場に搬入します。
・材料の前処理
生の原料に付着している汚れや異物を洗い落すために洗浄するほか、使用する部分だけを選別します。これらの作業はほとんど機械化され、スピーディに処理されます。
・金属探知など異物検査
缶詰やレトルトパウチに注入する前に、再度品質チェックを行います。異物等の検査も行います。
・充填・脱気・密封(巻締・シール)
原料は、決められた内容量の基準にしたがって、計量してから缶やパウチに充填されます。
密封する前に、中の空気を取り除きます。
これには、以下の理由があります。
①加熱殺菌中に容器内の空気の膨張により缶が変形したりパウチや缶が破裂するのを防ぐため
②缶詰貯蔵中の缶内面の腐食を防ぐため
③酸化による内容物の色、香り、味、栄養素の変化を防ぐため
しっかりと脱気を行ってから、ウェットフードは密封されます。
・殺菌・冷却
ウェットフードの製造でもっとも重要な工程が、この殺菌・冷却の工程です。
密封された缶詰、レトルトなどは、殺菌機によって加熱殺菌(レトルト殺菌)されます。これは細菌など微生物を加熱によって死滅させて腐敗を防ぎ、長く貯蔵できるようにするためで、中身の種類によって加熱温度と時間を変えて行います。
魚、肉、レトルト食品などの場合は100℃以上の温度で時間をかけて殺菌することが必要です(加圧加熱殺菌=レトルト殺菌)。殺菌が終わると、品質の変化を防ぐため、ただちに水で冷却します。
・検査・包装
出来上がったウェットフードは、真空度の低いもの、詰め過ぎや軽量のもの、凹んだものなどの不良缶を選びだして取り除かれます。
この検査は昔は打検棒で軽くたたいてその時の音で判断していましたが、現在では自動機械で検査します。
レトルト食品については、金属探知機などを通過させて検査します。
レトルトパウチの「レトルト」ってどういう意味?
レトルトとは、もともと缶詰やレトルトパウチの加工で使う「レトルト(高圧釜)」を指す言葉でした。その後、中心温度が120℃以上で4分間以上高温高圧殺菌を行って作られた「密封された食品」を指す言葉に変化していったそうです。
しかし、現在ではレトルトと言えばパウチに入った加工食品を指すことがほとんどですよね。これは、レトルト加工に適したパウチタイプの容器が広まった際に、「レトルトパウチ」の「レトルト」の部分だけが定着した結果です。
レトルトで高圧で加熱することで殺菌を行う缶詰やレトルトパウチのキャットフードは、常温で長期間の保存が可能なため、保存料が入っていると勘違いされる方がいます。
ですが、缶詰やレトルトパウチなどのように高圧と高温で殺菌処理を行ったものには保存料、殺菌料を使ってはならないことが、食品衛生法で定められています。
これらの食品が常温で長期間保存できるのは、空気、水、細菌などが絶対に入らないように密封してあり、中身は完全に加熱殺菌してあるためです。
雑菌やカビの発生の原因を徹底的に排除し、成分などが変質する原因を取り除いているため、長期間の保存が可能になっているのです。
おわりに
今回は、キャットフードの製造方法に関する疑問や謎についてご紹介いたしました。
これまで、キャットフードの成分や原材料については何度かご紹介してきましたが、製造についてはあまりご紹介する機会がありませんでした。改めて調べてみると、「そうなんだ~」と思っていただけることも多いのかなと思います。
今回ご紹介したのは、一般的な例であり、各メーカーが様々な工夫を凝らしてキャットフードを作っています。基本の作り方を知ればフードごとの個性も見えやすくなってくるはずです。