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- 猫研究所
2022.09.01
猫のウェットフードは長く保存できるの?冷凍保存するときのコツ
ウェットフードを保存する必要がある時、多くの方は冷蔵で保存すると思います。開封後のウェットフードは、できればその日のうちから長くても2、3日で使いきることが推奨されていて、その間も冷蔵庫での保存が前提となっています。
それ以上の日数保存したい場合には、冷凍保存が一つの手段。小分けにして冷凍保存すれば小食の猫に合わせた量をスムーズに与えることにもつながります。でも、人間の食事と比較して、キャットフードの冷凍って難しいイメージがありませんか?「風味が落ちて猫の食いつきが悪くなってしまうのでは」と心配される方も多いと思います。
少しでも猫に美味しく食べてもらうため、ウェットフードを冷凍する時に気を付けたいポイントとはどのようなことなのでしょうか?今回は、ウェットフードの保存についてスタッフ猫たちが調査してきたようです。その調査結果をご覧ください。
ウェットフードの風味や品質が落ちる要因を整理
まず、ウェットフードを保存しているうちに風味が落ちたりして嗜好性が低下してしまう理由にはどんなものがあるのでしょうか。
【ウェットフードの風味が落ちる代表的な原因】
・微生物による作用(腐敗・発酵)
・食品中の酵素による分解などの作用
・酸化などの化学作用
・乾燥などの物理作用
これらの原因のうち、微生物の働きによるものと酵素によるものについては冷凍保存を行うことで、ある程度のレベルまで防ぐことが可能になります。
冷凍状態では微生物の増殖を大きく抑えることができるためです。一方で酵素は低温にも強い傾向がありますが、常温よりは活性を低下させることができます。
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ランラン先生
基本的には、常温保存よりも食品の品質を維持するのに適しているのが冷凍保存ということができます。
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ムー
えー?でも冷凍にしたら美味しくなくなっちゃうんじゃないの?
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ランラン先生
そうですね。まずは、冷凍した食べ物がおいしくなくなってしまう理由を深掘りしましょう。
冷凍した食品の風味が落ちる理由
猫は食に敏感な子が多く、風味が落ちると嗜好性が落ち、食べなくなってしまうことも少なくありません。適切に冷凍できなければ、冷凍保存も風味が落ちてしまう結果になる可能性も。
私たちも冷凍した食品を解凍すると、味が落ちたり、食感が悪いと感じた事があるかと思います。
食べものを解凍した後に味や食感が落ちたと感じてしまう原因は、冷凍によって食品の細胞が壊れるためだというのが、一般的な見解です。
さまざまな食品を冷凍すると、食品に含まれる水の分子が凍ります。生の食材の場合はこの時にできた氷の結晶が食品の細胞を破壊してしまい、解凍した時に旨味成分や水分が流出してしまったり、食感を変化させてしまう原因になります。
「冷凍した野菜がフニャフニャ」「お肉を解凍したらパサパサに」、こんな”困った”の原因はここにあるのです。
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王子
む!?でもマグロやかつおは、冷凍でも生と変わらないほどにおいしいものも多いのだ。あれはどうしてなのだ?
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ランラン先生
実はマグロやかつおなどは、水揚げされてすぐに超高速冷凍して出荷されていることが多いんですよ。これは日本の特別な技術で、このおかげで私たちはおいしい魚を食べることができているんです。
ウェットフードを冷凍保存する時のポイント
ウェットフードは水分が非常に多く、水分量が総量に対して80%以上ということも少なくありません。
また、ウェットフードには多く肉や魚などが使用されていますので、それらの特徴を踏まえたうえで冷凍保存を行う時に知っておきたいポイントをまとめてご紹介します。
■一食分ごとに小分けして冷凍するのがオススメ!
ウェットフードにも多く使用されている肉や魚などのタンパク質や脂質は、酸化が進むと風味が落ちる大きな要因となります。
タンパク質や脂質の酸化を抑えるためには、空気に触れる機会をなるべく減らすことが重要。
そこで、一度に食べる量に合わせて一食分ずつ小分けして空気を通しにくい素材(ポリ塩化ビニリデンなど)を使っているラップに包み冷凍する方法がオススメです。
使用する時には必要量だけを出して解凍することができるので便利ですし、酸化リスクも最初に小分けする時だけで済みます。
また、水分量が多すぎて、ラップで包みにくいときは、氷を作る際に使用する製氷皿を活用してみるのも一つの方法。
製氷皿にラップを張り、穴にひとつひとつウェットフードを入れていけば簡単に冷凍できますし、製氷皿の1個当たりのグラム数をあらかじめ計っておけば、その後は計量する手間が省けます。製氷皿はシリコン製のものが取り出しやすく便利です。
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ランラン先生
一食分ずつ解凍して与えられるだけではなく、目分量で一度に与える量が増えたり減ったりすることがなくなるので、体重管理が必要な時にもオススメの方法です。
■冷凍してから風味が落ちるまでは約2~3週間が目安
冷凍すればいつまでも保存できるようになるのか、というとそうではありません。冷凍保存することによって、ウェットフードは2~3週間を目安に保存期間を延ばすことはできるようになりますが、それ以降は徐々に風味が落ち、嗜好性も劣っていく可能性が高くなります。
長期間冷凍しすぎてしまうと、冷凍焼けといわれる状態になり、色味やニオイが変質してしまいます。
冷凍焼けになってしまうと、ウェットフードに含まれていた水分が飛び、細胞に穴が開いた状態になってしまいます。この隙間に空気が入り込み、タンパク質や脂質などの成分を一気に酸化させることになります。
とくに冷凍焼けによる劣化が激しいといわれているのが、EPAやDHAに代表されるオメガ3脂肪酸を含む食べ物。そもそもオメガ3脂肪酸自体が低温でも固まりにくい性質を持っていて、冷凍でも酸化が進みやすい成分です。
オメガ3脂肪酸を多く含むウェットフードは、冷凍してもなるべく早く食べさせることをオススメします。
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ゴロー
ややっ。2~3週間も持つようになるでありますか!それはスゴイであります。
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ランラン先生
とはいえ、日が経つにつれて徐々に風味が落ちていくのは事実ですので、冷凍しても早めに使いきるのがオススメです。
■おいしく解凍する方法はあるの?
冷凍保存したウェットフードを使用する際には解凍が必要になりますが、その際に電子レンジを使用してしまうと加熱の具合にむらができたり、加熱しすぎでにおいが変わり、猫が食べなくなってしまうことも考えられます。
冷凍庫から冷蔵庫の中へと使用する分だけを移動させて、解凍する方法がオススメです。
前日の夜のうちに一日の使用する予定の量を冷凍庫から冷蔵室に移動させておくことで、翌日の朝から与えることができるようになります。
おわりに
猫用のウェットフードを保存する時のポイントと、冷凍保存を行うにあたっての注意点についてご紹介しました。
もちろん、猫にとっては開けたてフレッシュな状態がベストです。栄養面でも嗜好性でも開けたての状態にはどうしても及びませんが、いつも中途半端な量ウェットフードが残ってしまって気になっていたという方は、冷凍保存をすることも視野に入れても良いかもしれませんね。
猫用ウェットフードは使い切りサイズのものが多いですが、中には大容量タイプのものもありますし、トッピングとして使っているとなかなか使い切れないということもあります。
そんな時には今回ご紹介したポイントを踏まえて冷凍保存を行ってみてくださいね。
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ムー
でもやっぱりムーは開けたてフレッシュの方がいいわねえ。美味しさも香りも違うもの!……マエダ~?新しいのちょうだ~い♪
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ゴロー
え?そうでありますか?ボクちん、さっぱり違いが分からないでありますよ~。ムーちゃんが残すならボクちんがいただくであります。(モグモグ)
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ランラン先生
このように、冷凍のウェットフードを食べる猫もいますし、受け付けない猫もいます。猫それぞれですね。