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2020.04.09
換毛期の猫の被毛を美しく保つには?被毛に関係する栄養を知ろう
季節の変わり目になると猫の被毛は「換毛期」と呼ばれる生え変わりの時期を迎えます。ブラッシングをする度にたくさんの毛が抜け、初めて猫と暮らした方はその量に驚くこともあるかもしれません。
季節に合わせて暮らしやすいように体温調整などを行う被毛はとても大切なもの。そんな被毛が生え変わる換毛期を迎えた猫のために私たちが心がけたいことは何でしょうか?換毛期ならでは必要となる栄養はあるのでしょうか?
今回は猫の換毛期に、猫の被毛を健康的に維持するために知っておくとちょっと役に立つ栄養についてご紹介します。
たくさん毛が抜ける換毛期に必要な栄養とは
猫の被毛が生え変わる換毛期は、季節の変わり目の中でも特に秋前や春先に起こるといわれています。この時、猫の体の中ではたくさんの毛を新しく作るための栄養が必要になります。
総合栄養食タイプのキャットフードを与えていれば、基本的な栄養素は不足することはありませんが、体質や栄養の吸収の状況は猫それぞれ。
被毛の様子がいつもと違う、と感じたりパサついていたりする様子が気になるようであれば、意識的に補給してみるのも良いかもしれません。
被毛を作るのに必要な栄養素、タンパク質(アミノ酸)
被毛を作っていくために必要な基本的な栄養素としては、タンパク質などに含まれるアミノ酸があります。
アミノ酸は猫の体の基本的な細胞全般を作るために必要な栄養素であり、筋肉や皮膚、血液などを作り、維持していくためにも必要な栄養素です。すべての細胞と同じように、被毛も新陳代謝によって常に古いものから新しいものへと移り変わりを繰り返すことで維持されています。
被毛の材料となるアミノ酸が不足することで、この健康的なサイクルが乱れてしまったり、十分な細胞が作れずに被毛がパサパサしてしまうことがあります。
また、小食の猫やハイシニア猫、病気の療養中の猫たちの場合は主食を十分に食べることができず栄養が不足してしまうこともあります。
良質なタンパク質(アミノ酸)が豊富に含まれた肉や魚、乳製品などをオヤツや副食として取り入れてみるのもいいですね。
■ 良質なタンパク質って?
良質なタンパク質とは、必須アミノ酸をバランスよく含んだものです。猫にとっての必須アミノ酸とは、バリン・ロイシン・イソロイシン・ヒスチジン・アルギニン・リジン・トリプトファン・フェニルアラニン・メチオニン・スレオニン、そして厳密にはアミノ酸ではありませんが、タウリンの11種類です。
これらのアミノ酸は、それぞれをバランスよく摂取しなくては、体内で効率的に使用することはできません。
また、アミノ酸には体内で合成できるものとできないものがありますが、上記の必須アミノ酸は体内では合成できないため、食事で取り入れる必要があります。
被毛は、ケラチンと呼ばれるタンパク質から成り立ち、ケラチンは、メチオニン、シスチンなどのアミノ酸から構成されています。
被毛にツヤを出し皮膚のバリア機能を維持する 脂質
脂質は、タンパク質に次いで、猫の毛ヅヤを出したり健康を維持するのに役立つ栄養素です。
猫の健康維持にも役立つといわれている不飽和脂肪酸は、被毛の健康にもうれしい栄養です。
特にオメガ3脂肪酸は、皮膚や被毛の表面をコーティングして保護し、雑菌やウイルスなどの侵入を防ぐバリア機能を維持します。
また被毛の表面を保護する皮脂を適量出すことで、毛ヅヤを出すだけではなく、被毛と被毛がこすれることで起きる静電気や毛のもつれを予防する効果も期待できるのだとか。被毛を手触りよくするのにもうれしい栄養素なんですね。
オメガ3脂肪酸を含む食材としては魚や魚油などがあるほか、猫の食事にトッピングできるオイルやサプリメントなどもあります。魚の香りがする魚油は、お魚が好きな猫の食欲を促進してくれる効果もあるので、最近少量足してみるのもオススメです。
しかし、脂質はカロリーが高いため、取りすぎないように注意したいですね。また、お腹が弱い猫は摂取しすぎると下痢や軟便になることもあるので、その猫にあった適量を与えることが大切ですね。逆に、ウンチが固めだったり便秘気味の猫にはおなかの調子を整えるために少し与えるのもいいかもしれません。
被毛の細胞を作るために必要な 亜鉛
被毛を作るための原材料となるアミノ酸を十分に摂取したうえで、被毛となる細胞を作る際に必要になるのが亜鉛です。
亜鉛はミネラルの1種で、食べ物から摂取したタンパク質の代謝や細胞、DNAなどの合成に必須の栄養素です。より多くの細胞を作る時には特に要求量が多くなり、猫が一生のうちで最も要求量が多いのは成長期の子猫の時期だそうです。
基本的に総合栄養食タイプのキャットフードを与えていれば、不足することはないのですが、被毛が多く抜け替わる換毛期は、それ以外の時期と比べてより多くの細胞を合成する必要があるので、一時的に亜鉛が多く使われているのかもしれません。換毛期の時期だけ毛がパサパサしていたり、毛割れや脱毛が起きやすいようであれば、亜鉛を含むサプリメントを使ってみるのも良いかもしれませんね。
食材ではレバーや煮干し、猫でも食べられるように作られたチーズなどにも亜鉛は含まれています。
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成猫の亜鉛の要求量は1kgあたり0.75mgですが、人間はそれよりもずっと低く体重1kgあたり0.21mgで、猫は人間の3~4倍の亜鉛が必要ということになります。
亜鉛は、人間と同じ食事内容では猫には不足してしまいがちな栄養といえるかもしれませんね。猫は野生で暮らしていたころは、現在よりも多く動物の内臓などを食べて亜鉛を補給していたのかもしれません。
おわりに
猫の被毛の健康維持のために知っておくと役立つ栄養についてご紹介しました。もちろん、猫の被毛の状態が変化するのは栄養不足だけが原因とは限りません。病気のサインの可能性もありますし、引っ越しや環境の変化などによるストレスが原因のこともありますので、一つの意見として参考にしていただけると嬉しいです。
また、基本的なことになってしまいますが、皮膚や被毛の健康維持のためにはブラッシングもとても大切です。特に換毛期の猫は抜けた毛をそのままにしてしまうことで静電気を帯びてほかの毛と絡まり毛玉ができやすくなるほか、ほこりなどを巻き上げてしまうこともあります。
ブラッシングで猫の体に触れることが体調の変化などに気が付くきっかけになることもあるので、(嫌がる猫もいますが…)猫の健康維持、そして美しい被毛を保つためにも食事の見直しと合わせて定期的に行っていきたいですね。